韓国のLGエレクトロニクスが施策を展開したプラットフォームは、「あつまれ どうぶつの森」と「フォートナイト」。世界的にもユーザー数が多く、人気を集めている場で実施した。しかし、日常で利用してこそ役割を全うできる家電という商材の体験をなぜバーチャルで行うのか。同社のマーケティング統括責任者 宇佐美夕佳氏に聞いた。
ゲームで施策展開した目的は製品プロモーションではない
韓国・ソウルに本社を置くLGエレクトロニクス(以下、LG)は2021年3月、任天堂が展開するゲームソフト「あつまれ どうぶつの森」(以下、「あつ森」)内にLGの有機ELテレビの世界観を体験できる島を公開した。「あつ森」への家電ブランド参入は、LGが初めてだ。
さらに同年9月には、グローバルキャンペーン「2021 LG Healthy Home Solutions Campaign」の一環として、「あつ森」に加え、エピックゲームズの人気バトルロイヤルゲーム「フォートナイト」にも最新の生活家電を体験できるエリアを公開。「あつ森」では、洗濯機や冷蔵庫・電子レンジ・食器洗浄機、エアコン・空気清浄機など、多岐にわたる家電を体験の対象にした。
グローバルキャンペーンでは、どちらのゲームにも「LG×Habitat Korea」というフォトゾーンを設置。スクリーンショットをハッシュタグ「#LGHome」を付けてSNSに投稿すると、世界70ヵ国以上で住まいの問題に取り組む国際NGO「Habitat for Humanity」が展開しているプロジェクトに、LGを通じて生活家電を寄付することができる。昨年は、本キャンペーンを通じて200台以上が寄付されたという。
このように、現実世界以外での顧客接点をこれまでも拡大してきたLG。他企業も「体験の提供」を目的にバーチャル上への店舗出店を進めるなか、同社が選んだプラットフォームはゲームだ。コロナ禍で人と人との直接的なコミュニケーションが少なくなってしまった当時、世界中の人とつながりを持てる手段を議論したところ、韓国でも人気になっていた「あつ森」と、世界的にもユーザー数が多い「フォートナイト」を活用することに決めたという。
しかし、LGが扱うのは日常生活で利用する家電製品。ゲーム上で施策を展開することでメーカーが得られる手ごたえはどこにあったのか。LGエレクトロニクス・ジャパンのマーケティング統括責任者である宇佐美夕佳氏は、企業への「共感」が鍵になったと話す。
「昨年末から行っているグローバルキャンペーンの原点は、コロナ禍で困っている人に対して何かアクションを起こせないかという想いでした。世の中の関心事も、“誰かのため”や、“支え合う”という...