SNSの登場で可能になった顧客との双方向的なコミュニケーション。しかしバーチャルで広がっていたのは、それ以上にインタラクティブで現実的なコミュニケーションだったと日産自動車の遠藤和志氏は話す。同社は「NISSAN CROSSING」のバーチャル化で、何に可能性を感じたのか。
バーチャル上にオープンしたのはユーザー同士が自由に話せる“場所”
日産自動車(以下、日産)は昨年11月、バーチャルギャラリー「NISSAN CROSSING」をソーシャルVRプラットフォームのVRChat上にオープンした。24時間365日、国内外問わず開放状態を維持しているが、社員が常駐していないことが特徴。あくまで、ユーザー同士が自由にコミュニケーションをとる場を提供している。
「NISSAN CROSSING」とは、同社が銀座で運営しているギャラリーの名称。顧客に“ワクワクする未来のドライビング体験”を届けるという日産の経営方針と、それに関連した取り組みである「ニッサン インテリジェント モビリティ」の発信拠点としている場所だ。
今回、同社がバーチャル上に展開した目的は、先述の通り、ユーザー同士が自由にコミュニケーションをとる“場所”の提供。企業と顧客との直接的なコミュニケーションの場というより、ユーザー同士が主体的に集まってコミュニケーションをとるための“場づくり”という考えが念頭にある。より多くのお客さまに日産を知ってもらうための新たなタッチポイントとして活用するべく、まずは企業広報の役割を中心に、メタバースへ本格参入した。
主体となって運用しているのは、同社の日本事業広報渉外部 部長の遠藤和志氏と鵜飼春菜氏の2人。遠藤氏はメタバースに参入する価値について、「社会にはさまざまなコミュニティがありますが、時代とともにその在り方も変化しています。昨今注目のメタバース、とくにVRChatは世界で多くのユーザーがいると言われ、すでにコミュニティのひとつとして確立されてきていることを考えると、トライする価値は大きいと考えました」と話す。
そもそも同社は2年前に、VRChatが運営するバーチャルマーケットに協賛を実施した経験がある。そのときにバーチャルコミュニティ内では、リアルとは異なるコミュニケーションのスタイルがあることを知ったと遠藤氏。そしてそのスタイルがあれば、SNSを超える新たなコミュニケーションが可能になると確信した。
「アバターを介すだけで、コミュニケーションをとる相手に対する先入観が取り払われることに可能性を感じました。人種や性の差別は、現実でもしばしば問題になりますが、バーチャルでは...