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私の広告観

必要なのは「アート」と「サイエンス」の再整理 作曲家たなかひろかず氏の広告観

たなかひろかずさん

『業務用ドンキーコング』『MOTHER』などの作品を通してチップサウンドをゲームミュージックとして世界に広めた立役者であり、アニメ『ポケットモンスター』の楽曲も数多く手掛ける作曲家のたなかひろかず氏。曲をつくる際の田中氏の思考と、現代の広告に思うことを聞いた。

たなかひろかず さん
1980年、任天堂入社。アーケード版『ドンキーコング』『マリオブラザーズ』、ファミリーコンピュータ『メトロイド』『光神話 パルテナの鏡』『ドクターマリオ』『MOTHER』、スーパーファミコン『MOTHER2 ギーグの逆襲』など数々の人気ゲームの音楽や効果音、プログラム制作を手掛ける。退社後〈たなかひろかず〉としてテレビアニメ・映画『ポケットモンスター』で数多くの音楽を手掛ける。また〈Chip Tanaka〉として2018年に〈FUJI ROCK FESTIVAL〉への出演をはじめ、国内外のミュージック・フェスティバルに出演するなど、ゲーム音楽にダブやテクノなどの音楽性を取り入れたパイオニアとして絶大な評価を得ている。2017年、自身初となる1stアルバム『Django』を発売。2021年11月には〈Chip Tanaka〉としての3rdアルバム『Domani』を発売した。

「砂漠のサボテン」が起点?3rdアルバム『Domani』への思い

任天堂のサウンドエンジニアとして『ドクターマリオ』『メトロイド』『マザーシリーズ』など、数多くの作品のゲームミュージックを手掛けた田中宏和氏。サウンド以外にも、「ポケットカメラ」や「ポケットプリンタ」といった、ゲームボーイを活用した電子玩具の企画・開発に携わったほか、「たなかひろかず」名義では、テレビアニメ『ポケットモンスター』の主題歌「めざせポケモンマスター」をはじめとする、『ポケットモンスター』シリーズの主題歌やエンディングテーマの多くを作曲。

任天堂を退社後、2007年以降は、「Chip Tanaka」の名義で、テクノ、ベース・ミュージック、レゲエ、チップチューンなどの音楽活動を行っている。

そんな田中氏は、「Chip Tanaka」として3枚目のアルバム『Domani』を2021年11月に発売した。チップチューンをベースに多彩な音世界を感じられる全14曲が収録されている。

3rdアルバムのタイトルである『Domani』はイタリア語で「明日」「未来」を意味する。本アルバムのテーマについて田中氏は、「コロナ禍で、ふと砂漠で生きているサボテンのことを考えた」と話す。

「いま我々人間は、コロナによって大きな打撃を受けています。しかし、サボテンなどの人間以外の生物にはあまり影響がないことです。人間は人間なりに、植物は植物なりに未来に向かって生き残りをかけています。未来を描く中で人の“願望”や“希望”、そして“存在の儚さ”などについて考えながら、『Domani』をつくりました」と田中氏。

収録曲のタイトルには、砂漠で生きるサボテンを起点に下調べを進める中でであった、砂漠で暮らす動物「フェネック(「Fennec」)」や、「砂嵐(「Sandstorm」)」なども採用。また、砂漠に不時着した経験を持つ、パイロットであり『星の王子さま』の作者でもあるサン=テグジュペリに共鳴する点も多かったことから、サン=テグジュペリが初めて飛行機に乗った年号である「1912」もタイトルとされている。

「音楽には儚い部分がたくさんあると考えています。地球の歴史を紐解くと、恐竜の時代から人間が誕生し...

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