短編集『フェイク広告の巨匠』でデビューを果たした牧野楠葉氏。小説家としての執筆活動と並行し広告会社も経営する牧野氏が考える、小説と広告のつながりとは。
現代のネット広告の闇と 生み出す制作者の葛藤を描く
9月に幻冬舎より発行された『フェイク広告の巨匠』は、愛にまつわる痛みや孤独を描いた5つのストーリーが収録された短編集だ。表題作である「フェイク広告の巨匠」では、アフィリエイト広告を扱う広告会社が舞台となる。
主人公である「佐藤」が働く広告会社に「ミニ」と呼ばれるひとりの女性が入社する。売れない小説家であるミニがその創作力を生かして書いたフェイク広告は非常に効果があり、商品は飛ぶように売れるように。業界内で“フェイク広告の巨匠”と称される存在になった。しかしミニは、双極性障害や拒食症などを患いながら、フェイク広告をつくる自分を罰するかのように徐々に精神のバランスを崩していく。
著者である牧野楠葉氏は、高校時代から執筆活動をスタート。大学は映像学部を選択し、映画について学んだ。映像学部で得た映画内に登場するモチーフや舞台装置に関する知識などは、現在の執筆活動にも生かされているという。
卒業後は広告会社に就職し、セールスライティングの業務を行ったのち、自ら広告会社を設立。現在は小説の執筆と並行して会社を経営している。
自身も広告制作に携わるからこその広告業界のリアルな姿と、現代社会におけるネットビジネスの闇が描かれている「フェイク広告の巨匠」。本作のテーマは「ブルシット・ジョブの時代における愛」だと牧野氏。
「“フェイク(嘘)”により収入を得ていることに対する虚無性と、都会に生きる人の虚無性をリンクさせ、その中で生きる若者の葛藤や痛みを伝えたいと考えました」と話す。
「フェイク広告の巨匠」含め、牧野氏の作品には...