脳性まひと向き合いながら、ポップ・バイオリニスト、作曲家として活躍する式町水晶氏。9月に実施された東京2020パラリンピックの閉会式での演奏時に感じたことや、障がいがあるからこそ考える視点を持てたという、これからのメディアへの期待について、話を聞いた。
リハビリで出会ったバイオリンで パラリンピック閉会式の舞台へ
3歳の時に脳性まひ(小脳低形成)と診断され、リハビリの一環として4歳からバイオリンの演奏をはじめた式町水晶氏。エレクトリックバイオリンによるエフェクターを駆使した独自のサウンドを奏でるなどポップ・バイオリニスト、作曲家として活動し、2018年に発売したCDアルバム『孤独の戦士』(キングレコード)でメジャー・デビューを果たした。
北海道で生まれ、東京都町田市育ちの式町氏だが、2017年からは神奈川県小田原市に在住。日本史に興味を持つ式町氏は、自身が尊敬する戦国武将であり小田原城を本拠としながら城下町の発展に尽力した北条氏康をテーマとした曲「UJIYASU」を作曲したほか、小田原市でのコンサート開催など、地域貢献活動も精力的に行っている。
式町氏の最近の活動の中で大きな転機となったのが、今年の8月から9月にかけて行われた、東京2020パラリンピック競技大会閉会式での演奏だ。演奏時の心情について式町氏は「一番印象に残っているのは、演奏を聴いてくださっている選手の皆さんの笑顔」であると話す。
「私自身、脳性まひや網膜変性症などを抱えて生きてきたなかで、悔しい思いをしたことも多くあります。本来はマイペースな性格なのですが、悔しい思いを積み重ねていった影響か、闘争本能や負けたくない気持ちが結構強くて(笑)。オリンピックやパラリンピックは競技なので、一番を目指すわけですよね。そこには喜びもあれば、それと同じ、もしくはそれ以上の悔しさもあると思うんです。でも、閉会式で私が見た選手の皆さんは、本当に素敵な笑顔だった。本気の勝負を超えて、互いの健闘をたたえあう気持ちのよい笑顔を見て、自分の未熟さを感じつつ、その場に携われたことが本当に嬉しくて、感謝の気持ちでいっぱいでした」(式町氏)。
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