現在の日本企業の価格設定にはどのような課題があるのか。プライシングスタジオ代表取締役社長の高橋嘉尋氏が従来の価格設定方法の危険性と、経営者がおさえておきたい価格に対する考え方を説明する。
経営を劇的に変える「価格」企業に与えるインパクトとは?
「市場の動向に合わせて変化する価格最適化手法が使われており、戦略的にプライシングが常に実行されている企業は、そうでない企業に比べEBITDAベースで8%以上も収益率が高い」。※1
この事実はプライシング戦略が経営において非常に重要であり、プライシングを自社の収益に直結する重要な要素として捉えるべきであることを物語っています。しかも、このデータサンプルは海外企業であり、ここ20年の間、過度の価格競争を繰り広げてきた日本企業※2においては、8%をはるかに上回るインパクトがあると考えます。
価格を価値から考えるバリューベース・プライシング
自社が提供している製品に対し「原価率は何%ですか?」、「競合製品の価格はいくらですか?」といった質問には、ほとんどの経営者や価格決定者は答えることができるはずです。
しかし「競合製品と差別化された価値はなんですか?」、「その価値に対し、顧客はいくらまでなら支払ってくれますか?」こういった質問に答えられる経営者や価格決定者は少ないのではないでしょうか?
一般的に価格を決める方法は、製品にかかるコストからの逆算で価格を決める方法や、競合製品の価格から足し引きをして価格を決める方法のどちらかだからです。もしこの方法で価格を決めているのであれば、それは非常に危険な状況です。この状況下において、もし原材料が高騰したら値上げを、もし競合企業が価格を下げたら値下げをするはずです。つまり、自社の収益に直結する重要な要素のうちのひとつ(価格)の意思決定が外部要因に依存してしまっているということです。
この状況から脱却できる方法の一つに、バリューベース・プライシング(Value-based Pricing)が...