広告マーケティングの専門メディア

           

2022年の消費者インサイト予測

哲学の視点で考える 顧客情報とマーケティング活動

岡本裕一朗氏(玉川大学)

技術の進歩は同時に、それを使う人々の価値観も変化させていく。顧客分析やパーソナライゼーション、クリエイティブの自動化、未来予測⋯デジタルシフトが加速し、あらゆる情報の取得・活用がはじまっているなかで、企業や生活者は、何を考えていくべきなのか。哲学・倫理学者の岡本裕一朗氏がその考察を語る。

重要なのは問題解決ではなく、問題をあらかじめ確認すること

新型コロナ感染症が発生してから、マーケティング活動が大きく変わり始めています。今まで、店舗での販売と言えば、対面を中心に行なわれてきましたが、感染リスクを避けるため、AIを駆使した自動化が進んでいるのです。それにともない、顧客などの膨大な情報が今まで以上に収集できるようになりました。

もちろん、こうした動きは以前からもありましたが、今回のコロナ・パンデミックによって、加速化したと言えるでしょう。しかし、急激な変化は、そのとき発生する問題を解決しないまま、先へと進んでいき、気がつくと取り返しのつかない事態になっていることも少なくありません。そこで、問題解決ではなく、何が問題なのかあらかじめ確認しておく必要があります。

たとえば、ある鉄道会社が利用者のICカードから得られる情報を、別会社に売却して問題になったことがあります。この問題は、個人情報をどう取り扱うか(プライバシー)が根本にありますが、それ以前に「情報」は誰のものかが明確ではないのです。個人が特定できるものをすべて消去したとしても、そもそも利用者からの情報を、会社側が勝手に(?)売買してもいいのか、スンナリ納得できないわけです。

利用者からすれば、自分が使った交通手段の記録ですから、それを本人の同意も取らずに使われることに、不快感をもつかもしれません。ましてや、利益を生み出す商売に利用されたとなると、認められないと言いたくなります。法的問題はさておき、こうした状況が明らかになるのは、鉄道会社にとって望ましくはないはずです。そのためかどうかは分かりませんが、情報の売却は一応「見合わせられた」のですが、問題そのものが解決されたわけではありません。

IoTの情報は誰のものか?自動運転車の事例で考える

こうした事例は、おそらく氷山の一角と考えることができ、現代社会ではむしろ、どこででも起こる問題だと言えます。しかも、今やIoTが急速に進化し、個人情報だけでなく、モノの情報さえもが外部から収集できるようになりましたので、問題はいっそう複雑になっています。

そこで今度は...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

2022年の消費者インサイト予測 の記事一覧

デジタルシフトに対応するコンテンツメディアの価値とは
哲学の視点で考える 顧客情報とマーケティング活動(この記事です)
2021年広告キャンペーンを振り返って見えた、4つのキーワード
2022年インサイト予測「ビジネスウェア」:従来とは異なるカスタマージャーニー
2022年インサイト予測「ヘルスケア市場」:新たな習慣に挑戦する好機
2022年インサイト予測「家ナカマーケット」:レトルト利用拡大、ごほうび需要も
2022年インサイト予測「エシカル消費」: 脱炭素に向けて社会全体が加速
2022年インサイト予測「リベンジ消費」: 外食はハレの日需要に好機
CMで描かれることも。より身近になったキャンプ市場のこれから
トースターが再び注目される理由 「今をどう切り抜けるか」の先へ
『ソバーキュリアス』にも対応 楽しみ方の選択肢を増やす「ビアリー」
地元への愛が会話のきっかけを生む 47種類のフラペチーノ
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する