エステーのファンベースドマーケティングに見る 企業と消費者のこれからの関係
マスメディアを使った一方通行のコミュニケーションしかできなかった時代から変わり、1対1、双方向のコミュニケーションも実現しうるSNSが登場した今、お客さまと向き合う企業の姿勢にも変化が求められている。従来のマーケティングの領域を超越したエステーのコミュニケーションから、企業とお客さまのこれからの関係性を探るヒントを考える。
「ポスト2020」広告マーケティングの行方
開催まで半年を切っての開催延期が決まった東京2020大会。2020年9月のゴールを目指し、走ってきた関係者は、どのような思いでプロジェクトを進めているのだろうか。東京2020大会を動かすのは、多様な組織や企業。ポジティブな意見ばかりではない環境のなか、個人の意思だけでなく、組織から与えられたミッションとして、難しい局面に立ち向かう人たちがいる。ゴールドパートナー企業の1社であるNECの山本啓一朗氏が、厳しい環境においても、活動を続ける人たちの今の心境に迫る。
今回は、山本氏が東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会スポークスパーソンの高谷正哲氏に話を聞きに行く。
山本:2021年1月現在の率直な気持ちを聞かせて下さい。
高谷:私は2007年から、オリンピック・パラリンピックに関わってきました。ところが開催まで4カ月というところで延期が決定。マラソンでたとえれば、40kmを走り切ったところで、「あと、10km!!」と言われたような感覚で。状況を考えれば他に選択肢はなく、正しい判断だったと思いますが、当時の疲労感は並々ならぬものがありました。
それでも2021年がやってきて、開催まで200日を切りました。自分の使命・ミッションを果たし、大会の成功に貢献して2007年から始まったひとつの物語を終わらせないと次に行けないな、と思っています。
山本:どうやって気持ちを切り替えたのですか。
高谷:いろいろな要素がありますがひとつに自分の役割を再認識したことがあると思います。
大会の延期は組織委員会の職員にも大きな影響を与えました。そこで自分まで落ち込んでいてはいけない。自分は彼らを鼓舞し、2021年のゴールに向かっていけるようにするのが役目だと考えるようになったのです。そこで、自らのネットワークを駆使して、オリンピアンなど複数の方にオンラインでミーティングに参加してもらい、自分たちの仕事の意義や価値を伝えてもらう機会を定期的につくりました。そこに参加したメンバーからの反応などを見ている内に、段々とスイッチが入っていったように思います。
山本:それは高谷さんにとってもメンバーの皆さんにとっても良い機会でしたね。
高谷:延期ということに対しても、社会からの様々な反応があります。でも、そういう時だからこそ、そもそものオリ・パラの社会的な価値とはどこにあるか。仕事に取り組む一人ひとりが何のためにやっているのかについて、納得することが大切だと考えたのです。
山本:2020年は、広報発信も難しかったですよね。
高谷:当然ながら延期が決まった直後は、ほとんどニュースを出せませんでした。4~5月のリリース発信は合わせて7本だけ。しかも後ろ向きな発信がほとんどでした。それが9~10月は29本になり、夏を超えて秋以降は、ほぼ通常運転になりました。
山本:延期決定前と仕事が全く変わりましたね。
高谷:延期が決まる直前は聖火リレー一色でまさに本番モード。それが延期になった途端、PRすることもなくなってしまった。それが夏以降は、リカバリーのフェーズになり、そこで「発信できることがあれば躊躇わない」と覚悟を決めました。
その最たるものが、車いすテニスの...