コロナの影響で、ビジネスの構造が大きく変わる中、事業自体の見直しを余儀なくされるケースも少ない。ここでは、大きな事業変革を経験しながらも一貫したブランディングに取り組んできたフィリップスに話を聞いた。
10年足らずでヘルスケアに転換 世界的な事業変革のモデルケース
オランダ・アムステルダムに拠点を置く、フィリップスは世界的に見て、事業領域の選択と集中の選択により、企業の変革を実現した成功企業と言われている。2011年にCEOに就任したフランス・ファン・ホーテン氏がヘルスケア企業への転換を掲げ、テレビや音響機器などの家電分野の事業を売却。ヘルスケア関連企業を買収するなどし、10年足らずでほぼ売上の全体をヘルスケア事業で占めるまでに至っている。
フィリップスの日本法人にあたるフィリップス・ジャパンの徳永恵美子氏は「私たちはヘルステック市場のリーダーを目指し、『2030年までに年間30億人*の人々の生活を向上させる』という具体目標を掲げています」と話す。
ちなみに日本におけるフィリップスの歴史は1953年まで遡る。日本電子開発としてフィリップス製品の日本市場への輸入を開始して以降、循環器疾患や急性期疾患の診断治療、照明や家電といった事業を展開してきた。その後、2017年に堤浩幸氏が代表取締役社長に就任。また同年にフィリップス エレクトロニクスジャパンから現在の社名に変更して以来、ヘルスケア領域への特化を明確に打ち出している。
フィリップスは現在、掲げるヘルステックにおけるリーダーというステージを「フィリップス6.0」と表現する。1891年の創業以来、社会環境の変化に合わせて、事業を拡大してきたが前述の事業ポートフォリオの大幅な見直しを行うなど、これまでに5つのステージを経て現在に至っている。しかし複数の事業変革を経験しながらも、その事業の根幹には、常に理念である「innovation and you(イノベーション・アンド・ユー)」があった。
「私たちは常に『社会に必要とされるイノベーションを提供する』を指針にしているため、そこの軸がぶれなければ事業の形は関係ないのです」。
日本でフィリップスと聞くと、「オーラルケアや理美容商材を提供する企業」と想起する人も多いかもしれない。もちろん、これらのパーソナルヘルス商材もフィリップス・ジャパンのヘルステックポートフォリオを構成する一要素だ。こうしたパーソナルヘルス領域だけでなく...