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コロナ禍で見直す企業理念

社会環境に応じ柔軟な事業戦略として具体化―ベンチャー企業座談会(1)

河野貴伸氏(フラクタ)、伊佐陽介氏(フォワード)

クライアント企業を取り巻く環境変化に伴い、マーケティング活動を支援するパートナー企業には臨機応変な事業・サービスの開発が求められている。みずから、企業のブランディングを生業としてきたフラクタとフォワードの2社の対談から、変化の激しい市場で戦う企業の理念について考える。

Philosophy

フォワード → 「自らを信じて前に踏み出す人が溢れる世界に」

フラクタ →「ブランディングで世界を豊かに」

──それぞれの企業の創業当時から現在に至るまでの事業内容の変遷についてお聞かせください。

河野:私たちフラクタの創業は2013年。デジタルネイティブなエージェンシーとして、当初はECサイト構築を軸にした制作領域で事業を始めました。そこから派生して現在では、広くブランディングの支援をするようになっています。“ブランディング”というと、一般的にはロゴや世界観といったところにフォーカスしがちですが、私たちはクライアント企業に対してブランド“ビジネス”の支援を行い、最終的に自走していただくことを目標にしています。

2013年の創業当時は、まだデジタルでのコミュニケーションが企業において十分に活用されていたとは言いづらい時代。ECの展開と、その延長としてSNSや広告の運用を依頼されることが多かったのですが、徐々にこのサービスだけではコモディティ化していくと感じました。その中で、ブランディングにフォーカスするようになっていきました。コロナ禍以前から「ブランディングで世界を豊かに」という理念を掲げており、その本質には変わりはありませんが、この理念を具体的に実行する段階においては、その内容は大きく変わったと思います。

また創業社長として最近意識しているのが、お客さまに対する発信を、私から“フラクタ発”にシフトしようということ。これは企業の成長の過程で必要なことだと考えています。そして今まさに社員自身が考えて、市場の状況に応えられるようなメッセージをつくろうとしているところです。

伊佐:私たちフォワードは、経営戦略・事業戦略をドライブさせるブランド戦略策定と、その戦略を着実に推進していける強い組織づくり、インナーブランディングのご支援を一気通貫で行っています。フォワードという社名には「関わる人を前向きにしたい」という想いが込められていて、それは今も変わらない当社の理念です。

今でこそ事業・組織の両輪が必要であるというポリシーで事業展開していますが、設立当初は、マーケティングリサーチからターゲット設定、コンセプトメイク、4P戦略・要件設定などアウターブランディング領域を中心に展開していました。

ただ、モノとして形になるプロダクトブランドと違い、カテゴリーブランドやコーポレートブランドの戦略は、様々な内外環境の変化によって継続されずに立ち消えになってしまうことも少なからずありました。

そこに多少のむなしさを感じて、企業のブランドやビジョンを、どう社内に浸透させるかという、組織人事コンサルティングに近い仕事も手掛けるようになっていきました。近年は中期経営計画の策定支援を行う機会も増えているのですが、その中で「最終的に目標管理や人事制度など企業の根本的な仕組みにまで落とし込まなくては、絵に描いた餅になってしまう」と考えるに至ったからです。

ブランドやビジョンなどの「概念」を、我々が「ブランドロードマップ」と呼んでいる具体的な経営指標に変換し、目標管理や評価までつなげるという、企業活動の基幹の仕組みまで一気通貫で行うところまで行きついたのです。

その過程で、人事のパラダイムと事業戦略のパラダイムは多くの企業でリンクしていないことが多い、ということも分かってきました。そしてそれを繋げることにこそ、私たちが様々な企業さまと関わる意義があると考えるようになりました。

──リモートワークも広がり、理念の浸透をはじめとうするインターナルブランディングに課題を抱えている企業は多いでしょうか。

伊佐:リモートワークが増えたことによる従業員エンゲージメントの低下は課題ですよね。私たちも...

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