クレイトン・クリステンセン氏が提唱する「ジョブ理論」。日本では2017年に書籍が出版されたことから、マーケティングの領域での活用が広がってきている。INDEE Japanのトレーニングディレクターで、イノベーションを通した新規事業開発、組織開発、人材育成を支援している山田竜也氏に話を聞いた。
「ジョブ」と「ニーズ」の違いは顧客起点と製品起点
ジョブ理論とは、徹底的に顧客側の視点に立つことで、これまでの延長線にはない新たな商品やサービスを生み出すための概念。2016年にクレイトン・クリステンセンが著書「Competing Against Luck」の中で提唱し、2017年には日本語版『ジョブ理論』も刊行され、マーケティング関係者を中心に関心を集めてきた。
「ジョブ理論」では、ある特定のシチュエーションでユーザーが成し遂げたい進歩のことを、「ジョブ」(Jobs to be Done、JTBD)と呼ぶ。そして顧客は商品やサービスを、なんらかのジョブを片付けるために『雇用』しているととらえる。
米国では90年代ごろから、すでにマーケティングの手法として用いられていたが、日本でも近年、マーケティングの文脈で語られる機会が増えてきたという。
イノベーションを通した新規事業開発を支援し、その中で「ジョブ理論」を必須理論として活用している山田竜也氏は、マーケティングにおいて「ジョブ理論」が活用される背景にあるものとして、商品・サービスのコモディティ化を挙げた。
「機能性の訴求だけでは消費者の心に響かない時代、顧客体験全体が競争軸になっている時代において、『ジョブ理論』が注目されているのだと思います」。
環境変化でジョブが強まりイノベーションを創出する
それでは、顧客の要望をとらえるという点で以前からある「ニーズ」という概念と「ジョブ」は何が違うのだろうか...