近年、テクノロジーが発達する一方、リアルな場に人が集まる機会は増え、企業のマーケティングの場としても注目されてきました。しかし現在、新型コロナウイルス感染症拡大のなか、イベントは自粛を余儀なくされています。これからのリアルイベントの展望について考えます。
画面には収まりきらない五感で楽しむ"感客"型の体験価値
私は近年に進んでいたリアル体験の兆候として、「観客から感客へ」という言葉を使っています。今は観るだけでは満足できず、五感で楽しめる360度の体験を求めている、ということです。
私は、泡にまみれる泡パーティー「泡パ®」や、120万枚の花びらに埋もれる「サクラチルバー by 佐賀」など、様々な体験型イベントを手がけています。一見、流行りのインスタ映えイベントと思うかもしれませんが、その発想はまだ「観客型」です。インスタ映えイベントは、SNSでアップされた時の絵から逆算してイベントをつくります。裏を返せば、SNSにアップされない部分は軽視されることも多いのです。
例えば、画角に写り込まない空間や、料理の味、音楽の質などは、力を入れなくなる。しかし、来場した参加者は五感をフルに活用して楽しむので、そのチープさに気づきます。結果、SNSの絵は綺麗でも、参加者の熱量が伝わらない、そんな事態に陥ります。
あくまで体験を基準に考え、参加者が五感を使って楽しみ、心が動くように360度を設計する。またSNSで切り取られた時も、熱量が伝わる絵にする。そういう視点が、今、求められている「感客型」です。
新型コロナウイルス流行拡大のなか、人々が画面と向き合う時間が増えています。画面上で楽しむゲームやコンテンツも素晴らしいですが、音楽フェスや交流会など、リアルイベントを熱望してしまうのは、スクリーンで観るだけでは満足できない、五感で楽しみたいという潜在的なニーズが背景にあるからだと思います。
検索では見つからないセレンディピティこそが価値
埼玉県・柳瀬川のラーメン屋でDJイベントをやっている方がいます。なぜラーメン屋でDJをやっているのか聞いたところ、「カルチャーの交通事故を起こしたい」ということを言っていました。言葉は少し悪いですが、つまりは偶発的な出会いをつくりということです。普段であればクラブに行かないと出会えないDJに、近所のラーメン屋さんに行ったら思わず出会ってしまう。そして、予期せぬ出会いだからこそ、人によっては人生観を変えるような衝撃的な出会いになるのです。
世の中のほとんどのテクノロジーは利便性や効率を追求しています。自分が欲しいものの関連ワードを検索すれば、最短距離で見つかる。広告もSNSも、気づけば自分の興味があるもので埋め尽くされている。結果...