- 「顧客が望むこと」を主観と客観の両軸で考える。
- クリエイティブに期待されることは「商品をよく知り」「顧客が行動するツボ」を抑えたトップセールスパーソンの役割と同じ。
- アナログとデジタルの得手不得手を把握して補完する。
ダイレクトマーケティングのクリエイティブのポイント
ダイレクトマーケティングのビジネスフィールドとは?
ダイレクトマーケティングの分野は、大きくアクイジションとリテンションという2つの機能に分けられます。アクイジションとは顧客が商品の購入やサービス導入に至るまでのコミュニケーション施策で、リテンションとは顧客が商品購入やサービスを開始した後のコミュニケーション設計です。この2分野を別々に設計するよりも、ひとつの流れとして設計していく方が効果的なのですが、そこまで見据えて戦略を練っている企業は多くないのが実情です。
アクイジションでは、ブランド広告の他に、ダイレクトレスポンスアドという広告手法を用います。BS/CS放送でよく見るインフォマーシャル(インフォメーションとコマーシャルを合わせた造語で、いわゆる通販CM)や、新聞広告や折り込みチラシなどの施策を実施するのが一般的です。デジタルの手段では、リスティングやディスプレイ広告などの獲得系Web広告も効果的です。
一方リテンションは、ワントゥワンマーケティングとも呼ばれ、多くの人にリーチすることを目的とするマス広告と違い、より顧客と密にコミュニケーションを取ることを目指します。施策は、紙でのダイレクトメール(DM)や、Eメール(eDM)の送付などです。昨今では、LINEやInstagramなどSNSでのコミュニケーションも重要視されています。
知るべきことは顧客は何を望んでいるのか?
本記事では、後者のリテンションの部分のコミュニケーションとクリエイティブについて説明します。リテンション分野のコミュニケーションを総称してCRM(Customer Relationship Marketing)といいます。顧客との良好な関係を持続させて、購買を継続させる活動のことです。
しかし、すべての商材でCRMが機能するわけではありません。CRMの役割が顧客ロイヤリティの向上によって顧客の生涯価値を最大化することだとした場合、顧客ロイヤリティが向上しづらい商品・サービスも確実に存在します。例えば、商品選定の大部分が「価格優位性」のみで判断されるものなどです。
「CRMによって顧客ロイヤリティが向上する可能性がある(顧客がクライアントに期待するものがある)」と判断した場合に、まず自分が顧客ならば「何を望むか」「望まないのか」と考えます。ダイレクトに限った話ではありませんが、コミュニケーションビジネスに携わる際、自分がその立場になったと想像するのはとても重要なことです。特にCRMの場合、パーソナルなコミュニケーションがベースになるので、主観的な「望むこと」「望まないこと」の整理が求められるのです。
またデジタル技術が発達した今、CRMクリエイティブの重要な要素であるパーソナライズ化が容易になりました。パーソナライズされる情報が、顧客にとってどういう意味を持つのかを慎重に判断しないと、使い方によっては、顧客の不信を買う可能性があることも認識しなくてはなりません。
主観で考えた後は、客観性も必要になります。自分には必要ないものだけれど、他の人はどうだろう?という視点も同時に持ち合わせる必要があります。人は自分のいる場所や環境により、考え方が制限されます。そのため商品やサービスによっては、CRMにおいて顧客が望むことが、自分が知りうる世間、あるいは一般的な資料やデータでも想像のつかない場合もあるからです。
それでは結局、「顧客の望むこと」は分からないのではないか、と思う方もいるかもしれません。確かに、100%は解明できないかもしれません。しかし、まったく分からないというわけではありません。
そこで必要なのが仮説の検証です。「望むこと」「望まれないこと」の仮説立て、さらにそれを裏打ちする資料やデータを探し、なるべくその仮説の精度を高めるための作業をすることです。望むような資料やデータがない場合も多いですが、仮説が成立したならば、それを裏付けるデータや資料を探す。場合によっては(改ざんではなく)つくる作業をして、精度を高める努力をするのです。
クリエイティブの役割はトップセールスパーソン
戦略の次はクリエイティブです。顧客ロイヤリティを高める施策を実現させるためのクリエイティブとはどうあるべきでしょうか …