今年、日本からのSXSW参加者がとうとう1000人の大台に乗った。そのうち800人がバッヂ購入者である一方、5分の1を占める200人は、出展者やその関係者だったという。
来場者数同様、出展者数も右肩上がりに伸びており、確かに現地で会場を見渡すと、日本企業の出展が多く、目立っていた。
しかし、そもそも1~3月というシーズンは、SXSWの他にも、1月のCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)、2月のMWC(モバイル・ワールド・コングレス)、3月のCeBIT(セビット)という具合に、エレクトロニクスやテクノロジー領域の大規模なエキスポが世界中で開催されている。これらのエキスポを、購買先選定のための情報収集や、新製品発表に活用する企業は多い。
こうした中、なぜ今SXSWが注目されるのか。SXSWというイベントの魅力は、膨大な数が実施されるセミナーを聴講したり、トレードショー・企業パビリオンを見学したりと、一般的なエキスポに共通するコンテンツ視察だけに留まらない。
例えば、かつてTwitterやAirbnbがブレイクのチャンスを掴んだ「インタラクティブ・イノベーション・アワード」や「アクセラレーター・ピッチ」に挑戦する、トレードショーに出展し投資家や世界のギークたちからフィードバックをもらう、投資家やスタートアップ創業者などによるメンタリングセッションを受ける……。
このように、事業アイデアや製品の構想、現在進行形のプロジェクトを「プロトタイプ(試作)」として公開し、先進市場からフィードバックを受ける、あるいは投資家やメディアとのコネクションを得て、自らをハックすることができる点が、SXSWという"場"の魅力である。この場を大いに生かそうとする動きは、広告界にも広がっている。博報堂アイ・スタジオ HACKistのチームもその一つだ。
出展の目的はPRよりプロダクトの改良
アートとテクノロジー、コミュニケーションのアイデアをブレンドし、これからの生活のヒントになりそうなプロトタイプを提案する社内クリエイティラボのHACKistは、2013年に博報堂DYグループの中でも先駆けてSXSWにブースを出展。その後、4年連続で出展している。
昨年は博報堂のプロダクト・イノベーション・チームの「monom(モノム)」と共同開発した、ぬいぐるみに装着するボタン型おしゃべりデバイス「Pechat(ペチャット)」を展示。アプリと連動して、ぬいぐるみが子どもに話しかけるかわいらしいボタン型のデバイスは、メディアでも話題になり、仲介サイト「MAKUAKE」では50万円の目標金額に対し、30倍の1500万円を記録した。
HACKistは「Prototyping(プロトタイピング)」をキーワードとし、Pechat以外にも3年間で90を超えるプロダクトを制作してきたという。プロダクトの制作には先行投資が必要であり、リスクが高い一方でリターンは既存事業に比べればわずかと言わざるを得ない。そうまでしてなぜ、プロトタイピングに力を入れるのか ...