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広告を「読む」。

「でっかいどお。北海道」のコピーから読む「知性」のこと

山本 高史

広告を読めば、なんかいろいろ見えてくる。例えば「知性」のこと。

全日本空輸 1977年
コピーライター 眞木 準

宣伝会議賞の最終審査はいつももめる。グランプリに決まりそうになった作品に必ず誰かがイチャモンをつける、とかそういうことではない。「眞木準賞」に関して、である。「故 眞木準さんの功績と人柄を偲び、また宣伝会議賞の発展、後進の育成への多大なる寄与を顕彰するため」ということで、その名にふさわしい作品を選ぼうとするのであるが、そして「ダジャレコピー」がその候補として最終選考に残されることが多いのであるが、「眞木さんのコピーの本質はダジャレではない」「いやしかし、その言葉の軽妙さが眞木さんの」「ダジャレでもいいが、このダジャレは違うんじゃないか」などと侃々諤々(かんかんがくがく)<喧々諤々(けんけんがくがく)は、侃々諤々と喧々囂々(けんけんごうごう)が混乱された誤用>である。もともとその賞の判断の尺度が「創意、センス、技法など」とあまり明確でなかったり、審査員各人の眞木準像が各々のものだったりするせいなのだが、ぼくはやはり迷いながらも(眞木さんだったらどれを選ぶだろう)と考えて票を投じることにしていた。そしてようやく「眞木準ダジャレコピー」に関して思いつくことがあったので、今この原稿を書いている。

いきなり話を変える(眞木さんのことを書くための回り道だ)。かつて「大好きというのは、差別かも知れない。」の回でも少しだけ触れたが、言葉の誤用について書く。恒例の文化庁の「国語に関する世論調査」(平成26年度)ではいくつかの具体的な言葉を挙げて、その(主に)誤用の実態を調査している。

「枯れ木も山のにぎわい」という言葉は本来「つまらないものでもないよりはまし」という意味であるが、そのことを理解している人は20代で36.6%、30代で39.5%。「人が集まればにぎやかになる」という誤解をしている人とまったく意味がわからないという人を足し合わせれば、20代で57.5%、30代で51.5%となる。「小春日和」という言葉は「初冬の頃の穏やかで暖かな天気」を指すが、そのことを理解している人は20代で37.3%、30代で48.6%、さらに16~19歳では27.1%となる。「春先の頃の穏やかで暖かな天気」という誤解をしている人とまったく意味がわからないという人は、20代で55.2%、30代で46.5%、16~19歳では69.5%に及ぶ。若い世代のデータを掲げたが、「最近の若いヤツは」と嘆く必要はない。「枯れ木も山のにぎわい」を(誤解している+知らない)人は、40、50、60、70代でも軒並み50%を軽く越えている。諸先輩もあいさつなどで「本日はこの会に多くの人にご参集いただいて、まさに枯れ木も山のにぎわいでございます」とやらかしているわけである。

言葉は伝えたとたん、送り手のものではない。その言葉は受け手の評価にさらされ、むしろ送り手には手の施しようもないことになる。

プレゼントに似ていると思う。そのプレゼントに贈る人の思いやお金がいかに込められていようが、いるものはいるし、いらないものはいらない。その決定に際して ...

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