広告マーケティングの専門メディア

           

マーケティング課題の解決につながる! オンライン動画の活用戦略

米国潮流から読む日本のオンライン動画の未来

アンプリア 久保田朋彦

企業自ら動画を制作するケースもあれば、放送局を始めとした、優良な動画コンテンツを持つ企業のオンラインにおけるビジネスも活発になってきている。ここでは日本よりも、オンラインでの動画コンテンツ視聴が浸透している米国のトレンドを踏まえ、今後の日本市場の展開を予測する。

視聴者数は2億人目前 MCNのマーケット規模が拡大

米国のオンライン動画ユーザー数は1億8800万人(2014年)、2016年には2億人を超えると言われています。特に、タブレット端末からのユーザーの伸びが高く、8800万人(2014年)から、16年の1億1000万人と、年率14.5%成長すると予測されています。また、米国では全世帯のうち40%(4700万世帯)がインターネットに接続するテレビを保有しており、20年までには、その比率は80%になると予測されています。これらの多くは、ケーブルテレビ利用から乗り換えたユーザーです。例えば、Netflixとケーブルテレビの両方を契約しているユーザーの数は88%(2010年)から、80%(2014年)と減少しています。

これまでにない新しい潮流としては、「MCN(Multi Channel Network)のマーケット規模の拡大」が挙げられます。MCNマーケットが一つの市場として確立し、クリエイターが独自にコンテンツを提供でき、それ自体が新しいビジネスチャンスとして捉えることができるようになってきています。その結果、オンライン動画コンテンツの中でも、マス向けに作られた高品質かつ合法なコンテンツが増加してきています。特に、YouTubeがこのマーケットの整備を主導していることは、今後テレビ広告市場にも大きな影響を与えることが予想されます。

ディスプレイ向けの広告ターゲティング技術がオンライン動画にも応用されることで、動画広告技術プラットフォームは、急速な成長が予想されており、2014年には、3500億円を超えました。特に、ディスプレイ広告テクノロジーと同様に、RTB(Real Time Bidding)が動画広告配信の中でもキーコンポーネントとみなされています。

広告配信プラットフォームといった観点からは、プログラマティックビデオのプラットフォームプロバイダであるSpotXchangeやLiveRailが上位にランキングしている一方で、効率的な広告配信といった観点からは、Huluが突出しています。

これは、デバイスの普及および視聴ユーザーが増加した結果、コンテンツの配信そのものは増加をしたものの、マネタイゼーションといった観点からは、まだ課題がある、ということを浮き彫りにしたものと思われます。より的確なターゲットオーディエンスに到達するためのクロスチャネルをどのように活用するかが、今後求められるようになると考えられます。

米国と日本の動画市場 成立の背景の違い

動画の歴史をひも解くと、コンテンツの制作と配信に関する歴史的な経緯と、その流れをくんだ契約の考え方が日米では大きく異なります。

米国のメディア通信の歴史を語る上で欠かせない事実として、FCC(米連邦通信委員会)の定めた法令である「Fin-Syn Rule」が挙げられます。

この規制は、米国におけるテレビの3大ネットワーク(ABC、CBS、NBC)が巨大化し、コンテンツ制作まで強力な影響力を及ぼすような状況を避けるために、ドラマなどのコンテンツを、社外で制作することなどを定めたものです。

1996年に廃止されましたが、この規制により、コンテンツ制作(ソフト)と配信ネットワーク(ハード)が長い間分離されてきました。

その結果、テレビネットワークは「配信」に、ハリウッドを中心とした映画製作は「コンテンツ制作」に特化され、両者間での契約上の権利(ライツ)が映画ビジネスと同様に明確に定められることとなり、コンテンツの二次利用が容易な環境であると考えています。このような特性が有利に働き、オンライン動画市場も大きく拡大を続けていると言えます。一方で、日本では、「配信」と「制作」の機能が、テレビ局に一体化して発展してきたため、オールライツクリアを原則とした映画ビジネスとは異なるルールが実現している、ということが日米を同列に比較できないひとつの理由として挙げられると思います。

米国では、通信(販売、編成)と制作が分離しています。つまり、コンテンツ消費という観点からすると、流通経路がどうあったとしても、一つのコンテンツが、すべての流通経路合計で、どの程度収益を上げたかが重要になります。

一方、日本は他業界の例も踏まえて考えると、ユニクロを展開するファーストリテイリングが代表するようなSPAモデルで、製販が一体化している事業形態でこれまでやってきましたので、自社以外の流通経路確保への動機付けが低い状況です。

もちろん、米国の製販分離モデルが絶対的に優位ということはなく、それぞれにメリット・デメリットがあります。

日本の製販一体型のメリットとしては、商品力さえあれば、ユーザーを獲得し、リテインもできる、また値崩れしにくい、販売ルートを絞ることによりブランド価値を維持しやすい、といった利点が挙げられます。一方で、デメリットとしては、流通経路が細ってしまった場合、他のチャネルへの販売が難しい点が挙げられます。

現状、日本では放送局が自身の系列チャネルのみで放送・配信するということが基本になっています。つまり、コンテンツ単位での価値を訴求していく発想と契約形態が醸成されていません。インターネット動画についても同様です。テレビのリアルタイム視聴者数だけに捉われず、オンラインも含めて、トータルでコンテンツビジネスを考える必要もあります。

インターネットの影響力や広告効果について言えば …

あと65%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

マーケティング課題の解決につながる! オンライン動画の活用戦略 の記事一覧

継続的に制作するための動画“量産”テクニック
クリエイターから見たオンライン動画の可能性
動画制作&ディレクション現場に潜入!
バズるだけが価値じゃない!業種・ブランド別「ワークする」動画
米国潮流から読む日本のオンライン動画の未来(この記事です)
データで見る 最新・オンライン動画視聴状況
日清食品の動画コンテンツに見る エンゲージメント構築のポイント
「課題に合わせて、使い分ける」コーセーの動画活用
なぜテレビ通販会社がPR動画にメイドを起用したのか?

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する