絵本シリーズ「くまのがっこう」を軸にしたキャラクターブランド開発の軌跡を紹介するシリーズ連載第2弾。イベント、グッズ展開、映像化、デジタル展開など、絵本から立体的な展開を次々と実現してきた秘訣に迫る。
「くまのがっこう」グッズ展開。現在、国内で約80社と、韓国・台湾でそれぞれ約10社とライセンスを結び、グッズを企画開発している。
普段使いのグッズを通じてキャラクターが生活に根付く
「絵本発でオリジナルキャラクターブランドをつくる」というミッションでスタートした「くまのがっこう」。その関連グッズは現在1万点を超え、ライセンス契約社数は約80社に上る。当初は文具やぬいぐるみなどの雑貨が中心だったが、徐々に寝具類などの生活必需品に広がってきた。「日常で使っていただくことで、キャラクターがファンの生活により根付いていきます」と、「くまのがっこう」の生みの親で、同ブランドを展開するキャラ研代表の相原博之氏は話す。
商品化に当たっては、定期的にメーカーと会議を行っている。「こういうものを作りたい」というメーカー側の提案に対し、時に相原氏からも一歩踏み込んだ要望を出す。例えば、昨年発売した「くまのがっこう パンケーキパン」は、主人公のジャッキーの顔の形のパンケーキが焼けるミニフライパンだ。生地を流し込む量によって、2wayの焼き型が楽しめるのが特徴だが、これも「フライパンが作りたい」というメーカーの提案に対して、「顔の形に焼けないか」と相原さんから“逆提案”したことでできた商品の一つだ。
2013年、毎年最も優れたグッズに贈られる「くまのがっこう大賞」も受賞した「くまのがっこう パンケーキパン」。
映像が絵本の世界をぐっと広げた
「くまのがっこう」の映像デビューは、2010年に全国東宝系の劇場で公開された映画『くまのがっこう~ジャッキーとケイティ~』だ。この映画は東京国際映画祭にも出展し、絵本を読まない層に認知を広げることに成功した。
続いて、2013年には、NHK Eテレでアニメ「がんばれ!ルルロロ」がスタート。絵本『ジャッキーのいもうと』に登場する双子の「ルル」と「ロロ」が主人公のストーリーだ。映画の製作チームで1分程度のアニメのテストムービーを作り、NHKのプロデューサーに見せたところ、話がとんとん拍子に進んだという。今では公式グッズ、DVD、アプリ、書籍などを続々リリースし、ルルロロ関連だけで年間20億円を売り上げるまでに成長した。
「『絵本の世界をそのまま再現します!』という提案をいただくこともあったのですが、それではやる意味がない。絵本には絵本の、アニメにはアニメのよさがある。アニメ化で絵本の世界が広がってこそ意味があるんです」。映画を製作してみて、このチームのクオリティならできると感じ、アニメ化に踏みきったという。
ほか、カフェとのコラボレーションや、近年はデジタル領域での展開にも力を入れる。2011年渋谷のカフェと期間限定でコラボした「ジャッキーカフェ」は、オリジナルメニュー、店内の絵の展示、ミニライブなどを行い好評を得た。デジタル領域でも、ツイッター、フェイスブックなどのソーシャルメディアはもちろん、ルルロロの関連アプリは、知育系を中心に何と100本以上に上る。デジタル領域での展開は今後も積極的に広げていく予定だ。
原画展は年間2~3カ所ほどで開催。カフェイベントも各地で好評(左)。イベントとセット展開することが多い。
アニメ『がんばれ!ルルロロ』(NHK Eテレ)。
映画『くまのがっこう~ジャッキーとケイティ~』(2010年、東宝)。
「劇場版 くまのがっこう ~ジャッキーとケイティ~」
DVD発売中 ¥2,800+税
発売元:フロンティアワークス 販売元:東宝
©BANDAI/劇場版「くまのがっこう」製作委員会
ルルロロのアプリ展開。知育系を中心に100本以上ある。
判断の基準は「愛情があるかどうか」
カフェでオリジナルメニューを出すとなれば、「くまのがっこうらしい美味しさ」とは何か考える。映像に音楽をつけるなら、「くまのがっこうらしい音楽」について考えることになる。外部の専門家の協力も必要だ。リアルなフィールドに出ていくことで、各分野の専門家の力が加わり、キャラクターに新たな魅力が生まれ、ブランドの価値が増幅していくと相原氏は実感している。だから、「ブランドを強化するには、あえてチャレンジを重ねていかなければなりません」という。
幸い「くまのがっこう」には、「くまのがっこう」が好きなカフェオーナーや作曲家など、ファンの専門家が集まってくれる状況がある。「いい人が集まってくれて、愛情を持って作ってくれるのが本当にありがたい。愛情がこもったものは、必ず人に伝わりますから」。
日々さまざまな企画への判断を求められる中で、実施するかどうかの判断基準は「愛情があるかどうか」。「これが面白いから、受けるからといった理由ではやりません。愛情があるかどうかというのは、子どもたちが喜ぶかどうか。そこに基準を置けば、やるべきかどうかはおのずと分かります」。ブランドの領域が広がるほどに、日常の接点が増え、ファンも喜んでくれる。ブランドの成長がファンの喜びになる、理想的な状況が生まれている。
お問い合せ
株式会社キャラ研 http://bears-school.com/(くまのがっこう公式サイト)
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