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「個客」価値を可視化するマーケティング戦略とは?

ハイブリスジャパン

2014年5月、宣伝会議では、ハイブリスジャパン協力のもと、特別セミナー「いま実践すべき、
『個客』マーケティング戦略とは?」を開催した。そのセミナーの模様をレポートする。

(左)青山学院大学 経営学部 マーケティング学科教授 小野譲司氏
(右)電通 CDC プロジェクトプロデューサーズルーム専任部長 森 直樹氏

第1部
「個客マーケティングが注目される背景」

青山学院大学 経営学部 教授 小野譲司 氏

セミナーは青山学院大学の小野譲司教授の講演から始まった。小野教授は「本日のテーマである『個客』マーケティングの元となった考え方であるワントゥワンマーケティングは、実は90年代からあった言葉。テクノロジーが進化したことで商品・サービス、価格のカスタマイズ化や顧客別の企業との接点のシームレス化など、真の個客対応、ワントゥワンマーケティングが実現できる環境が整ったことで、改めて注目を集めるようになっている」と説明した。

一方で小野教授は「従来の延長で今の個客マーケティングを考えると、意思決定を誤ることもある」とも指摘。具体的には、ソーシャルメディアによってお客様同士がつながっている、現在の環境を踏まえた個客マーケティングが必要だという主張だ。CRMに取り組む企業の多くが、顧客の価値をLTV(ライフタイムバリュー)で評価しているが、どれだけ企業の売上に貢献してくれるかでなく、他の消費者の購買行動に与える影響も含めた個客価値の可視化が重要になってくると小野教授は指摘した。

さらに「企業の人は、よくロイヤルカスタマーという言葉を使うが、聞いてみると、その定義はあいまいなケースが多い。これはファンであるという心理面のロイヤルティと、商品を買っているという行動面でのロイヤルティの2つを区別して考えられていないため。この2つを分けて考えることで、今の時代に合った個客価値の可視化ができるはず」と続けた。

その後、小野教授からは専門的な知識を持っていて、企業の商品開発にも活かせるようなヒントを提供してくれる「リードユーザー」や、「他の消費者に商品をリコメンドしてくれる、リファーラル(友人紹介)バリューの高い消費者など、LTVを見ているだけでは分からない、企業に貢献してくれている消費者の具体的な例を挙げながら、お客様の価値を可視化し、分類して考えるためのヒントが提示された。

「実際にデータを分析すると、商品の良い口コミを発信してくれるインフルエンサーは、行動面でのロイヤルティは低いケースが多い。これはロイヤルユーザーよりも様々なブランドを試し、比較している消費者のほうが実はインフルエンサーになりやすいため。データを分析することで新たな事実が見つかることもある」と小野教授。個客マーケティングを考える上では、LTV一辺倒ではない視座が必要と講演を締めくくった。

第2部
「『個客』で考えるコミュニケーションとは?」

電通 CDC 森 直樹 氏

デジタル接点での体験価値向上が、企業のブランド価値に大きな影響を与えるという考えのもと、第2部にはアプリなど企業と消費者が接するデジタルチャネルのインターフェースデザインに多く関わってきた電通の森直樹氏が登壇。森氏は「個客への対応」というテーマについて、テクノロジーを活用して「個々の生活者に対応する」という視点と、個客から発想するコミュニケーションデザインの考え方=「ユーザビリティ視点のUI・UX」という2つの視点から、海外の事例を交えて講演を行った。自身が『モバイルシフト』という著書も刊行している森氏だけに、特にスマートフォン領域のジオフェンシング、iBeacon、LivePersonといったテクノロジーについて、その活用事例が紹介された。

また数々の企業のスマートフォンアプリ開発に関わってきた森氏は、個客と向き合うデジタルチャネルのインターフェース開発に、個客の視点から発想するアプローチが有効とも指摘。ある航空会社のアプリ開発のケースをもとに「コンテンツやUX開発の前段階で、戦略顧客を設定し、ペルソナを描くことが大事」と解説。「企業がアプリを開発する際は、より多くのお客様にとって使いやすいものを目指しがちだが、スマホアプリの場合は特に、ターゲットを絞り込み、さらには具体的な個人を戦略顧客として想定しながらカスタマージャーニーを設計することが、質の高い体験価値の創造につながる」と講演を締めくくった。

特別鼎談
いま実践すべき個客起点のマーケティングとは

セミナーの最後には、デジタル領域のマーケティングに精通する、スターバックス コーヒー ジャパンの長見明氏、タワーレコードの前田徹哉氏と、ハイブリスジャパンの堀裕氏によるパネルディスカッションを開催。ディスカッションでは最近、関心が高まる「オムニチャネル基盤構築」についても各社の取り組みが話された。

前田 ▶タワーレコードは実店舗とECチャネルの2つの販路があり、私の仕事は一言で言えば「ECの店長」です。売上に対する責任まで含め、統括しています。

長見 ▶私は企業サイト、EC、SNS、プリペイドカード「スターバックスカード」も担当していますが、当社の場合、ECチャネルの売上はさほど大きくないので、カフェの販促活動が主な仕事になります。

─CRMについては、どのように取り組んでいますか。

前田 ▶当社ではCRMの取り組みの一つとして、どの商品がいくらで何個売れたかの商品勘定に加え、「顧客勘定」という独自の考え方を取り入れています。商品が売れたというのは、所有権が企業から顧客に移ったということなので、顧客勘定を使いながら、お客様ごとに販売目標を決め、それに合わせたプロモーションを行っています。

長見 ▶コーヒーのような単価の低い商品では、行き過ぎたシステム投資をするとROIが合わないと考えています。最近はシステム価格が下がってきているので、環境は整ってきました。「スターバックスカード」利用者のデータ分析はすでに行っていて、任意で属性登録もしていただけるようにしたところ、すでに約40万人の方に登録いただいています。この会員データベースをO2Oおよびリサーチのプラットフォームとして活用を始めています。

─店舗を持つ企業のデジタルとの融合も今後のテーマ。グローバルでオムニチャネル基盤構築を支援する堀さんから、最近の動向を説明いただけますか。

堀 ▶私たち、ハイブリスは1997年にドイツで設立され、日本に進出したのは2012年。オムニチャネル・コマースのためのソリューションを提供する会社なので、最近は基盤構築の相談を受ける機会が増えています。お客様が様々なデバイスを自由に使い、能動的に行動する流れは、もはや誰にも止められないこと。だからこそ個客単位でシームレスな体験を実現するオムニ基盤が注目されていますが、フォレスター・リサーチ社の調査によると「オムニ基盤を構築できている」と回答した企業は全体の約5割という結果に。

オムニ基盤とは商品在庫、顧客データの統合というバックエンドの部分、さらに顧客接点におけるコンテンツ配信というフロントエンドの部分の統合だけでなく、その間をつなぐシステムが必要となるのですが、今その重要性に気づく企業が増えている状況と言えます。

前田 ▶オムニチャネルの波からは逃げられないとは思っており、当社の場合も今後のために準備を進めています。

長見 ▶飲食の場合は最終商品を店舗で調理するため、オムニチャネルに対する温度感は他の小売業とは違うように思います。ドリンクの引換券をプレゼントする「e-Gift」など、店舗の補完としてECチャネルを活用するほうが合っているかもしれません。

堀 ▶確かに飲食・グローサリー系は、在庫管理も難しいので実現は容易でないところもあると思います。グローバルでは欧州ファストファッション大手が当社のソリューションを導入していますが、国によってはECは行わず、あくまで商品やキャンペーンなどの情報提供しかしていないケースもあります。それでも個客別の適切なコンテンツ配信のために活用されていて、販売に関わらなくてもオムニ基盤は有効だと感じています。

前田 ▶オムニチャネル化を進める上で、実店舗で体験できる「ハイタッチ」のコミュニケーションをいかにデジタルでも再現できるかは課題ですね。

長見 ▶コンバージョンなどの可視化しやすいKPIを追いかけるだけではなく、体験を創る視点も重要ですよね。

─テクノロジーを導入する際にはデータとの向き合い方をはじめ、実店舗同様に生身のお客様と向き合っている心構えが必要ですね。

長見 ▶ビジネス視点も重要だと思います。宣伝部のような組織だと、売上は見ていてもシステム投資効果については弱かったり、前田さんのように総合的に見る人がいないこともあります。

堀 ▶売上へのコミットという点で言うと、システム導入に際し、情報システム部門とデジタルマーケティング部門の間で役割が明確になっておらず、導入の起案、そして導入後の投資効果、売上については誰が責任を取るのかという点が課題になりがちです。オムニ基盤構築も、それ自体が目的ではなく、お客様の満足を高めることを考えた結果、実現しうるもの。長見さん、前田さんのように、顧客視点、さらに個客視点を持つことが今の時代のマーケティング戦略に大切だと感じました。

写真右から、スターバックス コーヒー ジャパン WEB/CRMグループ グループマネージャーの長見明氏、タワーレコード オンライン事業本部 本部長の前田徹哉氏、ハイブリスジャパン シニア アカウント エグゼクティブの堀裕氏。

    お問い合わせ
    ハイブリスジャパン株式会社
    www.hybris.com/ja
    TEL:03-6737-3888
    E-mail.marketing_aban@hybris.com

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