日本唯一の広報・IR・リスクの専門メディア

           

話題を生み出す情報発信のアイデア

高まる人々の「セルフケア」意識 新しい自分を発見するサポートが鍵

横江哲弥氏(ミズノ)、熊本 薫氏(Greenspoon)、近藤裕香氏(博報堂)

コロナ禍には自宅で過ごす時間が増えたことで自身の生活を見つめなおす人が増加し、健康を意識した商品がヒットするなどの動きが見られた。新型コロナが5類に移行した2023年を経て「セルフケア」が情報発信のキーワードのひとつとなる中でどのようなコミュニケーションが必要となるのか。

    「セルフケア」に対する意識変化

    これまで

    「睡眠の質が悪い」「体調がすぐれない」「痩せたい」など自身がマイナスだと感じる点を改善するために、商品やサービスが求められた。

    これから

    自身を肯定し、より良い暮らしを送るための新しい可能性の発見をサポートしてくれる商品やサービスが求められる。従来よりポジティブな思考で心や体を気に掛けるように。

“個”の意識が高まる

─「セルフケア」に対する生活者の意識は、以前と比較してどのように変化しているのでしょうか。

近藤:私が所属する博報堂生活総合研究所(生活総研)は、生活者をまるごと理解するための調査や研究を日々行っている博報堂のシンクタンクです。その中で、1992年から約30年、隔年で実施している「生活定点」という時系列調査があり、生活行動や価値観、消費意識や社会観など、多角的な質問項目から、生活者の意識や欲求の変化を分析しています。この生活者調査の結果から今回の「セルフケア」というテーマを考えると、2つの視点があるように感じます。

そのひとつが、“個”への意識の高まりです。不確実な現在の世の中で、自分のことは自分で責任を取る、自分で面倒を見るという意識が根付いており、多様性の許容の促進もここに関連しているように思います。数十年分の女性誌の見出しを見比べてみても、以前は「モテ」「いま流行はこれ!」といった、他者から自分はどう見えるのかを重視していたところから、現在は「自分史上No.1」「自己愛」などの見出しが見られ、他人と比較するのではなく、自分がどう思うかの意識が高まっているのを感じます。

また、もうひとつがコロナ禍による外出制限により、自分と向き合う時間が増えたことです。SNSなどを通して美容や健康に関する情報も容易に手に入るので、出合った情報を試して自身でメンテナンスを行う人が増えたのではないかと考えます。生活者のこれらの意識変化は「生活定点」データにも表れており、2022年の調査では、「どのような時間を増やしたいか?」という質問で1番多かった回答が「睡眠時間」でした。また「休息・静養にあてる時間」は、20年ほど5位付近にランクインしていたのですが、2022年は3位という結果に。ここからも生活者の「セルフケア」意識の高まりが感じられます。

他人と比較するのではなく、自分がどう思うかの意識が高まる

博報堂生活総合研究所「生活定点」調査より。調査地域:首都圏40km圏 阪神30km圏、調査対象:20~69歳の男女3084人、調査時期2022年5月11日~6月20日(「生活定点」調査は1992年から偶数年5~6月に実施)、設計・分析:博報堂生活総合研究所、実施・集計:H.M.マーケティングリサーチ。

横江:ミズノは2023年6月に新シリーズ「MIZUNO SLEEP(ミズノスリープ)」を立ち上げ、まずはマットレス、敷パッド、枕といった商品を発売。睡眠市場に本格参入しました。長年、スポーツ用品を手掛ける中で、アスリートの最高のパフォーマンスを引き出すには、睡眠などの休む時間も重要だということで、“リカバリー”の領域に注目したところから、「MIZUNO SLEEP」の立ち上げに至りました。近藤さんがおっしゃっていたコロナ禍での睡眠や休息への意識の高まりは、私たちもブランド立ち上げの準備を進める中で感じていました。「MIZUNO SLEEP」の販売は、Makuakeでのクラウドファンディングからスタート。マットレスという商材の関係上、「実際に寝てみたい」「触ってみたい」といった要望が出てくるのも自然かと思います。

しかし、今回はそれよりもミズノ初のマットレスへの期待感の方が勝っており、約2000人が応援購入をしてくださって約6000万円もの売上となりました。コロナ禍での睡眠への意識の高まりと、デジタル上のみでの購買のハードルが下がっていると分かり、ビジネスチャンスだと感じました。

近藤:おっしゃる通りですね。コロナ禍により、デジタル上で情報を知り、そのままデジタル上で購入する抵抗感が薄まった人は多いと思います。そして、この購買行動は外出制限がなくなった今も続いています。生活者の行動を見ていると、便利なものは一度その快適さを味わうと、状況が変化しても戻らない、という傾向が見られます。

マイナスのものを改善したいという意識から、ポジティブなセルフケアへ

「MIZUNO SLEEP」ブランドの公式サイトでは、製品を体験したアスリートの声もコンテンツとして用意している。

2023年6月の「MIZUNO SLEEP」のローンチ時には東京と大阪でメディア体験会を実施。ミズノトラッククラブの飯塚翔太選手とディーン元気選手も登壇し、多くのメディアが集まった。

熊本:「GREEN SPOON(グリーンスプーン)」は、たっぷり野菜のヘルシーおうちごはんの宅配サービス...

あと62%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

話題を生み出す情報発信のアイデアの記事一覧

話題を生み出す情報発信のアイデアの記事一覧をみる

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
広報会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する