メディアや消費者の関心を集める手法として、過程をコンテンツ化する「プロセスエコノミー」がある。プロセスに付加価値をつけるポイントについて、「プロセスエコノミー」の提唱者である古川健介(けんすう)氏に聞いた。
─古川氏は2020年に「プロセスエコノミー」を提唱されました。
「プロセスエコノミー」とは、商品やサービスといったアウトプットだけではなく、それらを生み出す過程(プロセス)に価値をつけてコンテンツ化することです。情報があふれ口コミの拡散スピードも速い昨今、商品やサービスの水準が上がり、品質では差別化できなくなったためです。
ではなぜ、「プロセス」が注目されるのか、その肝は「双方向的なコミュニケーション」にあると考えています。SNSが発達し誰でもが発信者になれる時代の中、生活者は広告など一方的な発信には反応しなくなり、若年層を中心に「自分たちが参加(発信)できるもの」が消費活動の中心となってきています。象徴的な例として、2022年に英・米のYouTuberがローンチしたドリンクブランド「PRIME」は、初年度の売上が「約320億円」に上ったそうです。その勝因は、購入者がSNSで発信したくなる仕掛けが多数あったこと。そうした双方型コミュニケーションを促す手段のひとつが、「プロセスエコノミー」です。
─「プロセスエコノミー」で価値を出すポイントを教えて下さい。
重要なのは、プロセスを見せる際に生活者に「そのコンテンツが自分たちのものである」という感覚を覚えてもらうことです。そのため「生活者が発信者に回れるような“余白(ツッコミどころ)を残す”」必要があります。この方法は特に、予算をかけられない場合に向いています。例えば町のラーメン屋などは、「今日のスープはおいしいです」「今日は少し失敗しました」と、良いことも悪いこともさらけ出すと良いでしょう。プロジェクトを進行する際なども、トラブルまで赤裸々に開示していく...