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企業のサステナビリティ

投資家との「対話」を生みだす 長期視点で評価される情報開示とは

伊井哲朗(コモンズ投信)

長期運用に徹した投資信託の運用ファンド「コモンズ投信」の代表を務める伊井哲朗氏。2008年の創業当初から、企業を約30年の時間軸で評価する長期投資を進めてきた。長期投資家がサステナビリティ情報をどのように評価しているかを聞いた。



コモンズ投信の伊井哲朗社長は、企業が情報開示をする際に、最も重要なのはステークホルダーと正面から向き合い「対話」を重ねていく姿勢だと述べる。「企業情報をオープンに開示し、外部の知見を取り入れ改善する姿勢を評価しています。『対話』は情報のキャッチボールなので、開示情報に対するフィードバックを企業価値の向上につなげられるかが、持続的な成長の分岐点といえます」(伊井氏)。

フィードバックを得るにはまず、企業が現状に加え、中期経営計画やパーパス、ミッションなどを打ち出すことが求められる。「企業のありたい姿」を鮮明に開示すると、投資家が「その不足点」をフィードバックすることが可能となる。逆にルール通りの情報を開示するだけにとどまっては、企業の学びにはなりにくいのだ。

現状より「源泉」の開示を

その上で、コモンズ投信が企業を評価する指標は5点あるという。

1点目は「収益力」。5点中、唯一の財務情報(=見える価値)だ。主に決算数値を確認するが、長期投資に特化した同社では、創業からすべての財務データを俯瞰し、10年先の業績イメージまで描く。中でも「有事での対応力が、その企業の伸び代を測る指標になる」と伊井氏。経営危機など厳しい局面が成長の糧になっている企業は、長期視点で投資がしやすいという。

以降の4つは、非財務情報(=見えない価値)に分類される。2点目は、「競争力」だ。現時点のものよりも、「競争力」の持続・成長性を確認する。

例えば、「市場で世界トップシェア」という企業の場合、今後もシェアを守れるのかに着目。「人材採用の方向性」や「従業員へのインセンティブの仕組み」「入社後のやる気を喚起する人事制度」など企業の決算発表では開示されない部分を見ていく。「知りたいのは『競争力の源泉』です。統合報告書やESGレポートにも、その観点から企業の人事制度や従業員のウェルビーイング施策が開示されていると、評価しやすいですね」(伊井氏)。

「ありたい姿」との連動が鍵

3点目は、長期的な「経営力」。主に2つの要素から確認することが多い。ひとつは、サクセッションプラン(次期の経営者を選ぶ仕組み)の整備の有無。カリスマ経営者によって事業成長を実現していても、今後の「経営力」は担保されない。「次の経営者の育成プラン」や「幹部候補生のターゲティングの仕組み」の開示が重要だ。「サクセッションプランは、100社あれば100通りの正解がありますから、それ自体の是非は問いません。ただ例えば、世襲の場合であっても、その整合性についての説明が付随していると評価につながります」(伊井氏)。

もうひとつは、社外取締役を含め取締役会に参加する経営幹部(ボードメンバー)のスキルマトリクスの開示。統合報告書や株主総会の招集通知に記載されることが多いが、メンバーが持つスキルセットと「企業のありたい姿」が連動しているかを確認する。

一例をあげると、BtoC企業でありながら、取締会に...

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