気候変動リスクが深刻化する中、大気中への人為的なCO₂排出を実質ゼロにするカーボンニュートラル実現の必要性が叫ばれている。一方でCO₂は目に見えず、達成に向けた取り組みは長期にわたる。企業はどのようなステップで取り組めばいいのか。広報ができることは。
Q1 カーボンニュートラル経営を実行していくステップは?広報部門に期待されることは?
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社内の意識統一、丁寧な社外発信がカーボンニュートラル実現に必須
カーボンニュートラルは、全社一丸となって取り組むべき重要課題になっています。その実現においては、経営層から従業員まで意識を統一する「社内広報」が欠かせません。さらに、目に見えないCO₂の削減を語るには、言葉を尽くして説明する必要があります。カーボンニュートラルへの取り組みを、企業の競争優位性の源泉にしようとすれば、社外への「より丁寧なコミュニケーション」が重要になります。
社内広報の知見を活かす
カーボンニュートラル実現に向け企業が行うことを3つのステップと10の取り組みで整理したのが図1です。なかでも広報の役割が期待されるところを見ていきます。
出所:ボストン コンサルティング グループ
ステップ1「準備をする」で最初に取り組むのが「❶全社の意識を統一する」。ここを一番に行うのがカーボンニュートラル経営の特徴です。なぜならカーボンニュートラルに対しては「気候変動は深刻で絶対に達成しなければ」という方と、「本当に行う必要があるのか?ブームなのでは?」という方まで、幅広い考えの方が存在するからです。
これまで企業理念やパーパスの浸透活動をされてきた広報担当者の方は、そこで培われた知見を最大限に活かし「一丸となって取り組んでいく」という社内の意識を高めてほしいと思います。さらに言えば、パーパス自体にカーボンニュートラルの視点を入れ込むと、より成功しやすくなります。
ただ気を付けたい点もあります。経営理念やパーパスは、創業からの歴史と連続性があるため、従業員に説明する時に、今までの説明から多少飛躍があっても、会社の成り立ちや現在の業務と照らし合わせ理解しやすいところがありました。それに対して、カーボンニュートラルは、なぜ自社が取り組むのかをより丁寧に伝える必要があります。本当に伝わる切り口になっているか、都度確認するようにしましょう。
積極発信が資源調達に寄与
ステップ2「戦略を定める」では、企業はまず「❻-1要件を充たす」ための守りの取り組みを策定します。CO₂排出量を目標まで削減する作戦を立てる、ということです。同時に攻めの取り組みである「❻-2競争優位性を構築する」「❻-3新規事業機会を探索する」を考えることが経営視点では重要になります。
ただし、いくら戦略をつくっても、きちんと知らせなければ、攻めの姿勢は伝わりません。また積極的に取り組むスタンスを発信しておかないと、その後「❼-2外部パートナーとエコシステムを構築する」「❼-3必要な脱炭素資源を確保する」うえで、タイミング良く欲しい技術や資源が手に入らなくなる可能性もあります。
BCGの試算では「開発する道筋が見えている技術」を使って削減可能なCO₂の排出量の割合は、国レベルで見ても、各国7、8割程度※1。カーボンニュートラル達成は、新しい技術や資源がなければ困難なのです。
※1 気温上昇「2度シナリオ」に対し、2018年段階で「開発の道筋が見ている技術」を使って削減可能なCO₂の排出割合を試算した
脱炭素技術の開発を促すため、COP26では「ファースト・ムーバーズ・コアリション」が設立されましたが、これは企業が「私たちはこの技術が開発されたら、必ず購入します」と需要を約束することで、研究開発を促進する枠組み。こうした動きも出てきています。
自社でできる・できないこと
ステップ3「着実に推進し、成果を示す」では、「❾社会全体の変革に積極的に関与する」ことになります。