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地域活性のプロが指南

自治体広報を取り巻く状況はコロナ禍でどう変化したのか?

狩野哲也

新型コロナウイルスの影響で情報発信に苦戦する中、新しいアイデアで活路を見出した「まち」の情報発信をどうしていけばよいか。数多くの自治体をサポートする著者が紹介します。

長野県が公開した「教えて!!新型コロナウイルスワクチン」。当日の持ち物やワクチンの効果、副作用についてイラストつきで分かりやすくまとまっている。公式サイト上でダウンロードでき、誰でも使用が可能。写真はファイザー社製バージョンで、モデルナ社製バージョンも作成されている。

出典/長野県新型コロナウイルスワクチン接種アドバイザーチーム

2020年4月頃からコロナ禍に突入し、直接会って話ができない状況により、情報発信の手段が大きく変化しました。今回は「コロナ禍で新しく生まれた住民のニーズ」と「コロナ禍で発信の手段が変化したこと」について解説します。

新しく生まれた住民のニーズ

コロナの発生で最初に生まれたニーズはワクチンの情報です。当初は年長者を中心に重症化すると伝えられていましたが、夜の繁華街での状況が把握されるにつれて、若者に向けた情報発信に変化していきました。その情報発信の特徴は「パッとみて分かりやすい情報」と「ワクチン接種会場に足を運んでもらう情報」だったと私は考えます。

例えば長野県の「教えて!!新型コロナウイルスワクチン」は会場で必要な持ち物、副反応、免疫がつく目安などがまとまっている役立つ内容としてTwitter上で話題になりました。クリエイターの視点で見ると、どうしても多くなりがちな文字情報をできるだけ減らそうとデザインやイラストで工夫されているのが感じられます。

群馬県では、とにかく早く若者をワクチン接種会場に向かわせる方法として、スバルの車や宿泊券などが当たるキャンペーンを行い、1回目の接種率が4週間で2倍以上になったそうです。

若者に広く情報を届けたいのは日本だけでなく台湾も同じです。台湾の疾病管制署(日本における厚生労働省に相当する機関)による感染症を擬人化したキャラクターが、若い人たちの関心を集めました。悪意あるウイルスを拡散するハッカーをイメージしてつくられたようです。話題になりすぎてカレンダーまで作成し、Facebookページのフォロワーが一気に2万人増えたのだとか⋯⋯。

シンガポール政府も3月頃はお父さん世代がシニア層に向けて、ワクチン接種に行ってほしいことを伝える動画を、中華系、マレー系、インド系の3言語にわけてFacebookページやYouTubeなどを使って発信していました。しかし5月頃になると、ごきげんなおじさんが歌って踊るダンス動画に変わり、「#iGotMyShot」をつけて、YouTubeだけでなく、Instagram、TikTok、Twitter...

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