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地域活性のプロが指南

福岡市・里親普及にみる広報デザインの可能性

田北雅裕(九州大学大学院)

福岡市における里親制度の普及の背景にある「広報デザイン」の存在。予算や人材の確保も難しい中、官民が一体となったチャレンジについて解説する。

PR動画の映像やDVDパッケージで使用したイラストの二次利用も認めてもらい、ウェブページなどの各種媒体に活用。一体感のあるコミュニケーションが実現した。

イラスト:寺山武士

前回、福岡市の里親リクルート(広報を通して里親候補者を募集、登録を促し、養育が始まるまでの一連の行動)に貢献した、DVD制作について紹介しました。今回も、2014年以降に福岡市で里親委託が増加した背景について、広報面から解説していきたいと思います。

まず、DVD制作時に工夫した点がもう1点あります。それは、映像やパッケージで使用したイラストについて、今後の里親リクルート・広報における二次利用を認めてもらったことです。

広報予算の確保が困難な児童相談所(以下、児相)で、持続的にデザインを定着させていくために、そして、官民協働の営みの中で、一貫した体験を促していくためのデザインシステムの構築になります。

結果的に、児相のウェブサイトのリニューアル時(本誌2021年9月号連載第2回参照)にイラストを活用することで、里親に関する充実したページの作成が可能となり、里親情報が詳しく掲載された全国的にも珍しい児相のサイトとして、様々な媒体で紹介・引用されていくことになります。

また、前回記事で紹介したフォーラム「新しい絆」の参加者が、里親登録に至る次の行動に進みやすくするために、フォーラム最後にイラストを用いながらプレゼンテーションをする機会も設けました。そうして、一体的な体験を促していきました。

キーメッセージの顕在化

また、同時期に、福岡市で新たな事業が始まりました。校区に少なくともひとりの里親登録を目指す「校区里親」運動です。家族が病気などになって一時的に親元で暮らせなくなった子どもの場合、近所に里親がいれば、そこから学校に通い続けることができます。子どもにとって大きなストレスとなる環境変化を限りなく小さくするために、近所に里親がいる意味は大きいのです。またそれは、実親にとってもありがたいことです。将来的に、子育てで困った際に時々預かってくれる、頼れる支援者となる可能性があります。

そうした事業の流れの中で、里親リクルートに寄与するキーメッセージが顕在化していきます。それは、預かりが「短期」であることです。「里親」は、その言葉の中に「親」が入っているために、一般的には「親になる=子どもが大きくなるまで長期間育てる」イメージがあります。しかし、長期の場合は、戸籍上も親子関係となる制度「養子縁組」があります。もちろん、里親による長期養育のニーズもありますが、まずは短期の里親を経験し、そこから長期へステップアップすることで養育の質も上がります。

一般的には、里親と養親との違いを理解できていない人が多く、「長期間は無理」という思いが...

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