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ある広報人の告白

僕の広報の原点は、リーガルマインドとインテグリティ

日本マクドナルド 玉川岳郎

様々な領域で活躍中の広報パーソンに、転機となったエピソードや仕事における信条、若手へのメッセージなどを伺います。

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日本マクドナルド コミュニケーション本部 PR部 上席部長 玉川岳郎(たまがわ・たけお)
1969年生まれ。早稲田大学法学部を卒業後、1992年、リード エグジビション ジャパン入社。広報宣伝を担当。1996年、日本オラクル入社。グローバル広報の日本代表や、ソーシャルメディア戦略をリードする。広報室長を経て、2013年5月から日本アイ・ビー・エム(IBM)マーケティングコミュニケーションズ広報部長。2016年3月、日本マクドナルドに入社し現職。社外でも広報やソーシャルメディア活用などに関する講演や執筆、ブログなどでの発信で、後進の育成に寄与している。

オラクル、IBMと世界有数のIT企業の日本法人で広報部門を率いたのち、2016年3月に日本マクドナルドに転じた玉川岳郎氏に、自身のキャリアや広報観、今後のチャレンジについて聞きました。

なぜ、マクドナルドへ?

──玉川さんは広報の仕事の基本や心構えについて、誰から学びましたか。

最初は広報の仕事に携わったリード エグジビション ジャパン時代の上司です。座右の銘となる言葉をもらいました。1つ目が「嚢中(のうちゅう)の錐(きり)」。能力のある者は、どんな仕事でも工夫して何かが飛び出るということ。2つ目が「先達はあらまほしきことなり」。その道の先輩に学ぶことは多いということ。そして「人間万事塞翁が馬」。未来のことは分からないが、迷わず頑張ってみよう、ということ。これらは僕のDNAと言えます。

日本オラクルで10年経ったとき、これからは(会社と自分は)1年契約でいこう、自分の成長を1年ごとにベンチマークしよう、と決めました。それから現在に至るまで、成長できているかを常に意識しています。

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日本オラクル在籍時、広報室のメンバーと。


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2016年2月のIBM Watson日本語版提供開始の記者発表会で司会を務める。

──そして今年、日本マクドナルドに移られました。なぜ、マクドナルド?

このお話をいただいたときには意外性が高じてひらめきがありました。これまでIT業界こそが自分のドメインだと思っていましたから、Jリーグでやっていたらプロ野球に誘われたような感覚です。よし、ならば日本シリーズを勝ちに行こう、と。

マクドナルドは世界的に認知度が高く、日本でも約1億2700万人の国民のほとんどの方が知っていて、皆さんがお客さまです。そんなビジネスはそうありません。そして来るオリンピックのワールドワイドスポンサーです。2020年、世界が注目する中マクドナルドのブランドを背負うメンバーの一人となる。その広報として、世界中とコミュニケーションする。こんなに面白いことがほかにあるでしょうか。

日本マクドナルドは近年、色んなことがありましたが、今後上向いていくと確信しています。僕は自分のことを幸運なタイプだと思っていますが、そんなタイミングでこの会社と出合った。本当にラッキーです。

入社してからほぼ毎日、お客としても店に足を運んでいます。そして食べる前に写真を撮ってSNSにアップする。何が起きると思います?友人も「そそられる」と食べ始めるんですよ。決め球はポテトです。

「正しいこと」の尺度を持つ

──ソーシャルメディアやブログなどで積極的に発信されていますが、情報発信のポリシーを教えてください。

コミュニケーションは人を動かすことができる力です。力だからこそやみくもに使えばいいわけではありません。重要なのはまず礎(いしずえ)をつくること。リーガルマインドとインテグリティを持つことです。これが僕の広報の原点です。

インテグリティとは高潔さ。人が見ていないところでも正しいことをやる、その姿勢のこと。法律を知らなかったら、何が許され、何が制限されているのか分かりません。リーガルマインドとインテグリティに照らし合わせた時、法律では処罰されないけど、インテグリティで考えればアウト、ということもあるでしょうし逆もありえます。両方のものさしを持つバランス感覚が大事です。

憲法が保障する「言論の自由」、報道倫理規定、民法の権利関係、知的財産の基本的な概念は知っておいてほしいと思います。例えば「なぜステマはいけないのか」を深く理解しておく。こうした洞察の礎に、何をどうやってコミュニケーションしたいのかを構築していくのです。

──いまチャレンジしていることは。

グローバルのエグゼクティブらと対等に対話できる英語のコミュニケーション力を身につけたいですね。これまでも仕事で英語を使ってきましたが、まだ足りないと感じています。

自社と世の中の関係を形成し、ビジョンにたどり着くためのコミュニケーション戦略をつくり、実行していくことが当面の使命です。その過程で、日本のマクドナルドがグローバルでの存在感をさらに高めていく必要があると考えています。

今朝も「日本語のニュースリリースは国内のものだけだと思わないでほしい」と社内で話したばかり。グローバルカンパニーですから「シンクグローバル、アクトローカル」(グローバルに考え、ローカルに根ざす)で。目先にあることだけではなく、視野を広げて戦略立案と実行を繰り返していきます。

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マクドナルド店舗で研修中。

[インタビュアーから]
玉川流コミュニケーション術 広報はこうありたいと思いました

広報は長期的な世の中との信頼関係の構築であり、それは高潔さの上に成り立つと真摯に話す一方、「これ、どう?」と、マクドナルド公式ネクタイを楽しそうに見せてくれました。グッズは気分を醸成する一番良い方法と。広報としての経験、幅広い知識、ぶれない信念に支えられたお話の中に、時折、笑顔でユーモアを交える姿が印象的でした。

マクドナルドとの出合いは「幸運の女神には前髪しかないって知ってます?赤くて黄色いものが前から突進してきたから、パッとつかんじゃったんだよね」。玉川さんが世界中のお客さまとコミュニケーションし、世界の日本マクドナルドとなる日が楽しみです。

文/ハモニア 代表取締役 松原佳代(まつばら・かよ)

1979年生まれ。お茶の水女子大学卒業。編集・ライター職などを経て、2005年から面白法人カヤックで広報、企業ブランディングを担当。2015年に独立し、スタートアップの広報コーチを中心に広報コンサルティングを開始。

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