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「広報で社会課題の解決を」日本広報学会が20周年記念大会開く

創立20周年を迎えた日本広報学会の研究発表全国大会は、震災復興など社会課題の解決に向けた広報のあり方や、リスクマネジメントといった幅広いテーマについて話し合われた。

「災害復興と情報発信」と題した公開シンポジウム。
社会課題を解決する広報のあり方について議論した。

東京都文京区の東大本郷キャンパスで開かれた。

メディアが書きたいことを聞く

日本広報学会第21回研究発表全国大会は9月11日~12日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。統一論題は「リスクマネジメントと組織コミュニケーション」。災害や事件・事故、不祥事など危機時のコミュニケーションのほか、ソーシャルメディアに端を発する炎上事件などが日常の話題に上る中で、企業や組織の広報機能が果たすべき役割について議論した。

「災害復興と情報発信」と題した公開シンポジウムでは、岡本全勝・復興庁事務次官が東日本大震災からの復興の取り組みをテーマに基調講演を行ったのち、元神戸市代表監査委員・広報課長の桜井誠一氏、福島大学の小山良太教授(農業経済学)、いわき市市民協働課の江尻哲生係長が登壇しパネルディスカッションを行った。コーディネーターは関谷直也・東京大学大学院情報学環特任准教授が務めた。

復興庁の岡本事務次官は被災地の復興について、道路や学校・病院などの公共インフラ復旧に一定のめどがついたとして「産業と被災者の健康の復旧」「福島の復興再生」を今後の課題に挙げた。日ごろのメディア対応については、取り組みを伝えると同時に「彼らが何を書きたいかを聞くようにしている」と述べた。

1995年の阪神・淡路大震災発生時の神戸市広報課長である桜井誠一氏によると、神戸市には当時、震度7を想定した対応マニュアルはなかった。広報課員は当時17人。全員に出勤を命じるとともに、被災した街の様子をカメラやビデオで撮影させメディアに提供した。マスコミ各社には災害対策本部に隣接したスペースを提供。特にNHKの生活情報ラジオから「神戸市災害対策本部から」と流れたことは、市の取り組みの発信に寄与したという。

風評被害の払しょくが課題

いわき市の江尻哲生氏は、農作物の風評被害の払しょくに向けた市の情報発信の取り組みを紹介した。同市で採れる農作物について、安全かどうかの判断材料が不足しているから「とりあえず敬遠しておこう」という消費者が多いと分析。「安全性が心配なので避けるようにしている」と考える層をターゲットに据えた。「見せます!いわき情報局」と題したウェブサイトを開設し、放射性物質の含有量についての検査結果を随時公表したほか、テレビCMやラジオ、配布物などを通じて現状や生産者の思いを発信した。

福島大学の小山良太教授は、福島をはじめ東北産の農作物が今も敬遠されている現状や、福島県産のモモやなしの価格が他県産より安いことをデータで紹介。「なめこは(福島県の)相馬が発祥だが、長野県産に取って代わった。福島の米は主に北海道産に代替されている。流通構造が変わった今、なかなか元に戻らない」と強調した。風評被害をめぐっては、放射線物質の基準値を超えた米を全国に流通させるなど、事故直後の負のイメージを未だに引きずっているとし、「米の全量全袋検査など、福島だけが高レベルの検査を続けているが、県外の人にはほとんど知られていない」と指摘した。

コーディネーターを務めた東大の関谷直也准教授は、「災害対応や復興時の広報対応の教訓は後進に生かされにくい。継続的に考えていなかければならない」と総括した。また、広報学会の活動についても触れ、「企業や組織の問題だけでなく、社会問題の解決に向けて広報はどうあるべきかについてもっと扱うべき」と提言した。

20周年で功労者表彰

「リスク社会における政治行政広報」と題したシンポジウムでは、ワカゾウ最高広報責任者で元衆議院議員秘書の伊藤和徳氏、パイプドビッツ執行役員政治山カンパニープレジデントの高橋伸氏、総理官邸広報官室や内閣広報室を経て政策分析ネットワーク事務局長を務める田幸大輔氏が登壇。島根大学の本田正美・戦略的研究推進センター特任助教がコーディネーターを務めた。ネット上の評判を無視できなくなった政治家個人の広報対応や、Facebookなどデジタルメディアを活用した安倍政権の広報などが話題に上った。政治・行政の領域に広報のプロが不足している現状がたびたび指摘された。

今回は学会の設立20周年記念大会としても位置づけており、11日午前には20年記念特別セッションや20周年功労表彰、「日本広報学会史」の紹介などが行われた。功労者には、広報学会の第3代会長を務めた張富士夫・トヨタ自動車名誉会長、理事や副会長を歴任し今も会員を続ける猪狩誠也・東京経済大学名誉教授、初代理事長の富塚文太郎・同大学名誉教授の3人が選ばれた。このほか広報・組織コミュニケーションやリスクマネジメントをテーマにした27本の研究発表が行われた。2016年は10月29日、30日に北海道大学で開かれる。

「リスク社会における政治行政広報」をテーマにしたシンポジウム

基調講演を行う復興庁の岡本全勝事務次官。
仮設住宅居住者など、被災地で今も自宅に帰れない人は19万9000人に上る。
岩手と宮城については「(2020年の)東京オリンピックは
自宅のテレビでで見ていただく」と述べた

ポスター掲示による研究発表

「箱根駅伝優勝と大学評価の影響」について
発表する東洋大学の榊原康貴広報課長。
駅伝の優勝と大学志願者数の相関関係は低いとの結論

会場の東京大学大学院情報学環・福武ホール。
約150人の学会員のほか、公開シンポジウムは一般にも開放した。

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