ドン・キホーテを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)と博報堂は2023年12月22日、リテールメディア事業を展開する新会社「pHmedia」を設立した。同社の設立によって2社が目指す未来とは。
販促目的だけに閉じないリテールメディア活用を
──このほど設立した「pHmedia」。どのような事業を展開するのか、内容を教えてください。
奥田:「pHmedia」は、PPIHが持つ国内・海外700店超の買い場網や、国内では約1,300万ユーザーを持つ「majicaアプリ」の購買データから生まれる個客理解力と、博報堂の知見を融合して設立したリテールメディア事業を展開する会社です。「消費者の行動喚起に直結する、統合型のマーケティングおよび販促活動」を実現するべく設立しました。
小林:これまでリテールメディアを取り巻くステークホルダーとしてよく言われていたのは、メーカー、小売業、消費者の3者でした。pHmediaでは、メーカーを細分化し、「メーカー営業部」と「メーカー宣伝部・マーケティング部(以下、マーケティング部)」に分け、四方良しのリテールメディア活用を目指していきます。4者のハブとなり、消費者に最適なコミュニケーションを企画・実行することで、メーカーのブランディングと売上向上を同時に実現させることが目的です。
──設立の経緯を教えてください。
奥田:PPIHの自社決済アプリ「majica」は現時点で1,300万人を超える会員を有しており、お客さまとのデジタルにおける接点も順調に拡大することができてきました。そのようなタイミングでもあったことから、PPIHが持つデータを新たな広告・マーケティング手法に活かしていきたいと思ったのが、設立に至った背景のひとつです。ですが、これまでのPPIHとメーカーのコミュニケーションは、商品導入を目的とする営業部がメインで、マーケティング部とは密に会話ができていなかったこともありました。しかし、リテールメディアは、“販促企画”であり“広告”です。営業部はもちろんのこと、マーケティング部とのコミュニケーションが必要だと考えていました。
徳久:一方、博報堂は主にマーケティング部とコミュニケーションをとる機会が多く、お話を伺う中でも、円安や原材料高騰などを受けて、利益拡大のためにマーケティングコストの費用対効果を高めようという動きがますます高まっている状況です。要は、予算をかけた施策がしっかりと売上に結びついているのかを、透明性を持って社内に共有することが各社で求められるようになっているということです。これが、昨今リテールメディアが注目される背景のひとつだと考えています。
しかし、奥田さんのお話のとおり、小売企業にとってメーカーの窓口となるのは営業部がほとんど...