日本が誇る伝統食材の醤油。その個性を楽しむことができる専門店として、全国のメーカーからセレクトした商品を100mlサイズで販売する「職人醤油」が話題を集めている。ECと店頭それぞれの展開を進める、代表の高橋万太郎氏に話を聞いた。
「職人醤油」は、日常的に使用する醤油に対して、「生活者が意識的に選んでいない」と感じた高橋氏が、醤油における購買の常識を塗り替えるべくスタートしたものだ。始まりについて、高橋氏は次のように振り返る。
「現在、市場には約1100社の醤油メーカーがあります。しかし、醤油は同じメーカーのものを繰り返し購入することが多く、いつもと違う醤油を“一度使ってみる”機会が少ないと感じていました」。
さらに、醤油を学ぶ上で様々なメーカーを訪問した時の想いも重なっていた。「醤油メーカーを訪問する際、ショッパーのインサイトを理解して商品づくりをしているケースが少ないのではないかと思うことも、少なからずありました。使用シーンや声を耳に入れていないんじゃないのか、と」(高橋氏)。
そこで、蔵元仕込みの醤油を100mlから気軽に味わうことのできるサービス「職人醤油」の立ち上げを決意。食品との組み合わせごとに醤油を選び、使い分ける楽しみ方を提案しようとスタートした。現在は、拠点とする群馬県の前橋と、松屋銀座に店を構えている。
高橋氏によると、ギフト需要が高い松屋銀座店の一方で、前橋店だからこその集客も狙えているという。前橋は車での移動が多く、重量のある醤油も購入が可能となるため、客単価も高い傾向にあります。それぞれの需要に合った店舗展開の必要性を感じましたね」。
店頭とECの相乗効果と工夫したコンテンツづくり
一方で、デジタル上でのアプローチも欠かさない。「職人醤油」は、オウンドメディア内のコンテンツが豊富に存在していることも特徴だ。このコンテンツが、醬油の買い物にまつわるショッパーのインサイトを捉えており、商品の販売促進にも大きく貢献している。
高橋氏が創業当初から作成しているコンテンツは、醤油の知識を整理した「基礎の基礎」や「よくある醤油の疑問」といった、ショッパー視点でつくられたものがほとんどだ。その中でも、味の比較検証やアレンジ方法を試すコンテンツには反響が集まったという。商品選択に迷うショッパーにとっては、知識や情報が購買の入り口となる。そのため、基礎情報として「購入後の楽しみ方」をイメージできるコンテンツの提供が、商品選びのサポートにつながっているようだ。
さらに、高橋氏はECと実店舗の両軸の運営が、販売促進への相乗効果を生んでいるとも話す。...