実際に店頭の売り場で展開されている什器の数々。ただ設置するだけではなく、限られたスペースで販売促進を図るアイデアが求められます。ここでは、2022年から2023年に実施された販促施策の中から、編集部が選定した好事例を6つご紹介。企画・制作担当者が成功の要因を語ります。
事例1
レコードプレイヤーを模した什器で作品テーマを直感的に伝えるデザイン
広告主:小学館
制作:TOPPAN
担当者:TOPPAN 情報コミュニケーション事業本部ビジネスプロデュースセンター
第6営業本部 第2部1T 薄井大輔氏

作品の主要テーマである「ジャズ」を表現できるモチーフの選定が課題に。最終的にレコードプレーヤーのデザインに着地した。
小学館から発行されている漫画『BLUE GIANT』は、ジャズに魅せられた少年が世界一のジャズプレーヤーを志す物語だ。
2023年2月には劇場版アニメが公開され、シリーズ累計900万部を突破するなど、その人気は衰えることを知らない。
今回、同作の店頭什器を担当したのは、入社以来小学館の雑誌編集部や宣伝関連の部署を中心に担当しているTOPPANの薄井氏だ。「作品の内容を知らない方にも、直感的にテーマが伝わるように、作品のモチーフである『ジャズ』が前面に出るようにしたいと考え、レコードプレーヤーのデザインに着地しました」。
書店へ送付できるサイズ規定を考慮しながら、可能な限り実際のレコードサイズを再現できるよう、什器全体のスケール調整を行っていった。
段階的な訴求と可動式ギミック
サイズ調整を行う必要がありながらも、販促物として設置する以上、限られた陳列スペースの中で、他社の什器や商品に埋もれない見栄えを実現することも重要だ。
薄井氏によると、レコードプレーヤーを模した什器の形状は、遠目から見たときにも店頭での存在感が際立つと想定し、制作を進めたという。「ただ形状が珍しいというだけでは訴求力が足りません。
そこで、什器の背景にうっすらと作品の名シーンを散りばめたデザインに仕上げました。それにより、什器に近づいてみて初めて、作品の熱量が最大限に伝わるようにし、段階的に消費者に訴求する仕様を心がけました」。
また、実際にショッパーが楽しむことができる体験工夫も忘れていない。例えば、レコード盤の部分は、自らの手で回転することができる。「購買行動を喚起するためのアプローチとして、什器そのものに動きのあるギミックを施すことで、印象に残る設計を意識しました。
書店の中でビジュアルが埋もれてしまわないよう、立体感やレコードプレーヤーの再現性を重視したことで、独創的かつインパクトのある什器設計に落とし込むことができたと思います」(薄井氏)。
事例2
省スペースで訴求を高める方法視覚・聴覚刺激で視認性向上へ
広告主:キッコーマンソイフーズ
制作:ワヨー
担当者:ワヨー セールスプロモーションユニット 月田佑奈氏

展開の際、目に留まることを意識したことで、販促物が大きくなり商品が取りにくくなるケースも。省スペースでいかに商品を邪魔せずに目に留まり、商品購入につなげられるかもポイントの一つだ。
キッコーマンソイフーズが販売する「調整豆乳」。おなじみの緑色のパッケージは、店頭で目にすることも多いのではないだろうか。今回、同社は「豆乳をコーヒーで割ることで、簡単にソイラテができる」点を訴求しようと、店頭什器の制作に踏み切った。制作担当者の月田氏が注力した点はなんだったのだろうか。
「まずは、滞在時間が短い売り場で、ソイラテのつくり方が一目で分かることを重視しました。その上で、“動き”と“音”を組み合わせるアイデアを考えました」。
コップに豆乳を注ぐイメージを再現するため、活用したのが「ソーラームービング」。太陽光や蛍光灯の光を運動エネルギーに変え「ソーラームービング」。太陽光や蛍光灯の光を運動エネルギーに変え、振り子を左右にスイング運動させることができるPOPパーツだ。「視覚と聴覚の両方へ訴求することで視認性を高め、商品の認知や理解向上に寄与できると考えました。人の通行時にはセンサーが作動し、自動音声が流れるようにしています」(月田氏)。
フラットな売り場で差異化図る
一方で、豆乳製品売り場の多くは、商品陳列のみが中心となり、ツールの展示スペースが限られる課題も。
また、豆乳売り場全体は整然と陳列されているものの、他社との差異化が図りにくいことも課題だと月田氏。「そこで、豆乳を振り子運動させたことで、売り場内で商品を目立たせることができたと思います。さらに、什器が目に留まらなかったお客さまにも、音声を流すことによって、振り向かせることで、差異化戦略を図っています」。