日本を代表するアニメ『クレヨンしんちゃん』。2023年8月の映画公開に合わせて、都内を走る100台ものタクシーの窓ガラスジャックや、新宿でのOOH広告などを展開。『クレヨンしんちゃん』が街にあふれ賑わせた本施策の戦略について、プロモーションを担当する、ADKエモーションズ コンテンツ事業本部の絹木裕一氏、菊武俊輔氏、渡辺千陽氏に取材した。
『クレヨンしんちゃん』シリーズ史上初となる3DCG作品となった映画『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦~とべとべ手巻き寿司~』。その公開を前に、映画製作委員会は「映画シリーズ史上NO.1の興行収入達成」という大きな目標をKGIに掲げていた。これまで興行収入は20億円前後で推移していたが、過去最高額の22.9億円を超えるべく、収入増大策を考えたのがADKエモーションズのチームだ。メンバーの1人である絹木氏は、この目標を目指すにあたり、「従来の主要ターゲットであるファミリー層に加えて、新たなターゲット層の開拓が必要だった」と語る。
そこで新たにターゲティングしたのが、幼少期に『クレヨンしんちゃん』と接点があった30~40代の”オトナ層“。作品から一度離れた層に焦点を当て、作品との再会による視聴の機会創出を狙った。絹木氏が立てたプロモーション戦略は主に3つ。「①“オトナ層”を魅了するクリエイティブ開発」「②接点増加を図るOOH展開」「②“オトナ”ならではの利用ツールであるタクシーとの連携」だ。「まずはターゲットの“オトナ層”を魅了するクリエイティブ開発が必要と考え、東宝宣伝部門と連携する形でADK発のクリエイティブスタジオ・CHERRYを中心に据え、彼らの創造性と革新性を活かしたクリエイティブ開発に挑戦しました」(絹木氏)。映画特有の世界観やストーリーをシンプルに伝えられるよう、ターゲットと視聴者層が重なるラジオ番組や新聞に広告を展開したのだ。
2つ目の“接点の増加を図ったOOH展開”は日常生活の中で『クレヨンしんちゃん』との接点を増やすための施策。デジタルサイネージやボードだけでなく、タクシーアドでも広告を展開した。
同社の渡辺氏によると、メディアプランニングの時点で、ターゲット層が日常生活でどのメディアに接触する傾向にあるか、各媒体の接点データから徹底的に分析したという。「特に、都内でビジネス利用傾向が高いタクシーは、オトナ層にとって重要な移動手段でもあり、効果的な露出が期待できるメディア。日常の忙しさから解放される車内で『こんな場所にしんちゃん?』『…