ユーザーに選ばれるサイトやアプリの共通点とは何か。今回は、ユーザー視点の言葉選びが実装された「UXライティング」のテクニックを解説。一歩先の顧客体験をつくりだす4つの手口を紹介する。
UXライティングとは、ユーザーの体験(User Experience)を助け、体験の価値を高めるちょっとした言葉や短文のこと。主な用途として、WebサイトやLP、ECサイト、アプリなどが挙げられます。例えば、入力フォームやボタンなど、そこにある言葉によって、使いやすさやモチベーションは大きく変わりますよね。ユーザーが迷うことなくそっと寄り添って体験価値を向上させるのが、UXライティングの大切な役割です。
また、UXライティングは、単にユーザーがコンテンツを使いやすくするための言葉ではありません。UXを意識した一言を添えるだけで、コンバージョンに劇的な効果を発揮します。特に、「新規顧客・会員登録者を増やしたい」「Webサイトからの問い合わせを増やしたい」などの課題に有効です。コンバージョンは売上に影響する重要な要素。今では業界を問わず、デジタル領域で大きな注目を集めています。さらに、コストがほとんどかからないので、「あまり手間をかけずに改善に取り組みたい」という場合にもおすすめです。
私たち「ことばのUXラボ」がさまざまな企業・サービスのデジタルコンテンツを研究する中で発見した、「誰でも使える!コンバージョンを高める10の手口」の一部をご紹介します。
【手口1】
“あとひと息”でハードルを下げる「イマココ提示」
日本ではまだ認知度の高くないUXライティングですが、実は身近なところに使われています。はじめにご紹介したいのが、会員登録や予約フォームで見かけることの多い「イマココ提示」です。
皆さんはサイトの会員登録をする時に、いつまでも続く入力項目にうんざりして、途中で離脱してしまった経験はないでしょうか。こういった離脱を防ぐために使われているのが「イマココ提示」です。イマココ提示とは、名前の通り「今どの段階にいるのか」を提示するコピーのこと。ユーザーに対して今どのステップにいて、あとどのくらいのステップが残っているかを明確に伝える役割があります。例えば、「ステップ○/○」と進捗状態を示したり、「あと○問」とゴールまでにどれくらいかかるかを提示したりするコピーがこれにあたります。目的までの時間が可視化されることでコンバージョンの後押しにつながり、登録作業を小分けにすることで1つずつクリアしていく達成感も与えることができます。
また、登録フォームをつくる際は、情報の精査が重要です。一般的にユーザーに求める情報が多いほど離脱の可能性が高くなると言われているため、求める情報を最小限にし、ステップ数を減らすことが大切です。さらに設問が、回答しにくい個人情報の入力から始まるとハードルが上がってしまいます。最初の設問では、プラン内容など答えやすいものから回答してもらうのがポイントです。
【手口2】
一歩手前の行動で選択を促す「匂わせアクション」
迷っている人に寄り添い、行動を後押しする「匂わせアクション」。
例えば、レストランの予約サイトを見ている時、「空席確認・予約する」や「お気に入り登録」のほかに「とりあえず保存」というボタンがあります。これも「匂わせアクション」です。「お気に入り登録」まではいかなくても、ちょっと気になる店舗をリストに残すボタンを用意することで、獲得の間口を広げる手口です。
ECサイトの事例で言えば、インターネットショッピングで「購入する」は決断へのプレッシャーがやや強めの言葉です。これを「カートに入れる」にすることで、とりあえず確保といったニュアンスにし、心理的障壁を下げます。
また、会員登録させたい場合も「アカウント作成」「ログイン」との並びに「まずは見てみる」などのボタンを配置することで、サイト閲覧へのハードルを下げ、結果的にコンバージョンにつなげやすい構造にすることができます。
「購入」や「会員登録」など直結する行動の前に、まず行動を匂わせるワンステップを入れることで選択のハードルを下げるこのテクニック。「本当はどんな行動をしてもらいたいのか」を考えた上で、その一歩手前、心理的障壁が低い選択肢を用意し、サイトを訪れた人の立場に立って作るのが大切です。
ちょっとしたハードルを取り除いて、スムーズに行動(購買)につなげていくことが、ユーザーの体験価値向上につながります。
【手口3】
サブターゲットもすくい上げる「ウェルカムその他」
できるだけ多くのユーザーに...