消費者のデジタル接点の増加を追い風に、IP(知的財産)を活用した販促を目にすることが増えている。本稿ではフロンティアインターナショナルの野口光幸氏がIPキャンペーンを実施する際の手法やポイントを解説する。
まず皆さんは、普段アニメを観ますか?ゲームをしますか?幼少期には好きなアニメを何度も繰り返し観たり、親に怒られるまでゲームをしたものの、今は離れてしまっているという方も多いのではないでしょうか?
そのような人は、ぜひ再びアニメを観たり、ゲームに触れてみてください。一つの作品でよいので、ハマることをオススメします。日本は素晴らしいアニメ・漫画・ゲーム等を大量に生み出している世界有数のエンタメ大国です。普段アニメの「推し活」をしている人も、さほどエンタメコンテンツに親しんでいない人も、「メイド・イン・ジャパン」のエンタメコンテンツに触れてみてください。それにより、“今のIP”を少し理解することができると思いますし、ビジネスのヒントが見えてくるかもしれません。
「推し活(オタ活)」時代とIP
新型コロナウイルス感染症を分岐に世間は大きく様変わりしましたが、昨今の消費行動の特徴として「推し活」の活況があります。推し活とは、アニメのキャラクターやアイドルなど、自分が心から熱中する人やモノを応援する活動です。対象がアニメキャラクターであれば、作品動画を視聴したり、グッズを購入したり、イベントに足を運んだり、ファン同士がSNS上で交流する等が挙げられます。そして、コロナ前後の環境変化により行動が制限されたにも関わらず、全体での推し活消費額は増加傾向であることがわかりました(図1)。
イベントや物販の“現地”は間違いなく減少しましたが「巣ごもり需要」が牽引。これはIPの特徴であり、その周辺のビジネスは環境変化にも強いといえるでしょう。
また、Z世代とミレニアル世代の約3割が推し活を行っていると言われており、経済効果は「年間6000億円以上」にのぼると推計されています。推し活は「ライフスタイルの一つ」として定着しつつあります。
そして広告業界ではIPを活用したキャンペーンが躍進を続けています。コンビニエンスストア、スーパー、GMS、DS、デパート、外食チェーン、娯楽施設など、あらゆる業態で様々なIPキャンペーンを目にします。
ではなぜ今、IPを起用したキャンペーンであふれているのでしょうか?理由は明白です。人気IPとコラボすることにより、そのIP作品のファン(推し活者)を巻き込み、大きな販売促進効果が得られるからです。この記事を読んでいただいている方ご自身が、何らかのIP作品のファンであれば、この理由は腑に落ちやすいかもしれません。
しかし「アニメや漫画、ゲーム等にはもう触れていない」という場合には、イメージが湧きづらいかと思います。そんな方は、ご自身の幼少期を思い出してみてください。大好きなアニメのお菓子やおもちゃを、お家の方にせがんだことがあるのではないでしょうか?
大好きなIPが起用されている「キャンペーン抽選グッズ」や「期間限定商品」があれば、衝動的に「手に入れたい」と思うのが人間の性というものです。キャラクターグッズの商品化や、IPを起用したキャンペーンは、こうした心理に基づいて実施される施策と言えます。
IPキャンペーンの組み立て方
IPとコラボしたキャンペーンを組み立てるにあたり、今回4つのポイントで整理します。
❶ 対象となる商品(商材)のターゲットとIPのマッチング
極めて初歩的な話ではありますが、IPを選定する際、キャンペーンを実施する対象商品(商材)のターゲットと、IP(キャラクター等)の「マッチング」精査が必要になります。この2つにミスマッチが生じると、販促効果が思うように得られません。
わかりやすいように、例を用いて説明しましょう。例えば「20代の女性がターゲットの化粧品」がアニメIPとコラボしたキャンペーンを実施する場合、あなたはどのようなIPを候補とするでしょうか。極端ではありますが格闘系アニメのようなIPを起用するようなことは考えないはずです。そのような作品のキャラクターは、強く勇ましい印象がありますが、化粧品とは、ミスマッチだと言わざるをえません。
従って、この20代の女性がターゲットの化粧品には、これらのIPを起用することは(特殊な理由が無い限り)起こり得ないと思います。「商品(商材)ターゲットとIPのマッチングを考える」というのは、このような視点をもつことです。
❷ 売り場とIPのマッチング
続いて、売り場とIPについてです。特に...