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進化するリテールビジネスとプロモーション

サステナブルとデジタルが循環する、欧州リテールの現状

堤 藤成氏(フェズ)

オランダではコロナ禍を経てサーキュラーエコノミーの風が加速している。本稿ではオランダ在住で小売のDX支援を行うフェズのクリエーティブ・ディレクター堤 藤成氏が欧州のリテールのリアルな現状をレポートする。

Learning by Doing。これは私が住んでいるオランダのアムステルダム市が掲げている標語です。私が住むオランダでは、この標語の通り、コロナの脅威の中でも試行錯誤し、早々とサーキュラーエコノミー(循環型経済)をはじめとした21世紀の消費の在り方を模索し、新しい道を切り開きつつあります。今回は、サーキュラーエコノミーの最先端を走るオランダのリテールを中心に欧州の小売現場を読み解き、日本国内のリテール市場のヒントを感じていただければ幸いです。

購入と消費がとけあう欧州のリキッド消費

オランダで暮らしていると、コロナ後、ますます消費と所有の境目は曖昧になってきているように感じます。もともと欧州では、昔ながらの古い建物をそのままリノベーションして使い続ける文化がありました。つまり建物を所有するのではなく、その時代の空気感に合わせて最適な形で使用する「リキッド消費」的な価値観が強いように感じます。

例えば、日本でも身近なStarbucksも、オランダでは一味違います。アムステルダムの中心地であるレンブラント広場にある、歴史的な銀行の金庫室の地下スペースをリノベーションした『Starbucks The Bank』(図1)は、ヨーロッパで最初のStarbucksのコンセプトストアです。

図1 オランダの古い銀行をリノベーションしたStarbucksの写真(著者撮影)。

オランダの伝統と文化を継承した美しい店内は地元のアイデンティティを明確に打ち出しています。木の温かみのある重厚感ある趣で、時間を忘れて過ごすことができるため、私も大好きな空間です。

また近年のリキッド消費の代表格としては、まず買わないジーンズとして有名な『MUD JEANS』でしょう。オーガニックコットンを使ったジーンズのサブスクリプションサービスとして、オランダで注目を集めるファッションブランドとなっています。

最初に保証金と月々数ユーロを支払うことで、1年間ジーンズをリースできるというビジネスモデルを展開しています。1年たったら、追加費用を払って買い取るか、他のジーンズにリース契約するか、MUD JEANSに返却するかを選べます。契約期間中は、修繕などのメンテナンスも行ってくれるため、安心して使い続けられるのです。店内にはミシンや生地などが置かれた修理できるスペースがあり、店員がほつれを縫ったり裁断する様子を身近に感じることが...

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