ECの浸透率において、中国は29%、韓国は41%と日本の13%を大きく上回っている。本稿ではベイン・アンド・カンパニーの堀之内順至氏がアジアの先行事例から、日本が目指すタイムリーなパーソナル顧客体験の提供について解説する。
リテール業はEC化の進展、店舗網やサプライチェーン・マネジメントの最適化、値引き競争の激化、決済・デリバリー等業界外からの新規参入など、グローバルで複合的な難題に直面しています。消費形態も多様化し、サブスクリプションなど顧客の継続利用を促しライフタイムバリューを最大化させる販売形態も普及しつつあります。このような状況下では「商品特性と合致した顧客体験の繋がり」を強め、持続的な関係性を築くことが競合優位を創出する肝となります。
満足度が高い顧客の年間支出は、そうでない顧客の約2倍という調査結果が示す通り、顧客との持続的な関係性を構築することで経済効果のインパクトが大きいことは明白です。
一方で顧客の要求は益々高まり続けています。❶リアル店舗でもECでも1つのブランドとしてシームレスな購買体験をしたい ❷自分の志向に合ったお店で買いたい ❸モノの売買を超えたヒューマンタッチが好ましい ❹ブランドを通じた価値観に共感してお金を支出したい ❺利便性も大切だが記憶に残るような購買体験をしたい、という5つの特性が顕著です。
一方で「簡易な購買プロセス」、「欲しい時にすぐ手に入る」など基本的な体験への要求も厳しく、顧客の要求を満たした先行ブランドが顧客の期待値を更に高め、新たなスタンダードが更新され続けています。
本稿では、特にアジア地域に焦点をあてて、どのようにして顧客体験の繋がりを強め、オペレーションを進化させているのか、事例を交えてご紹介します。
EC浸透率が高い韓国や中国から学ぶ
日本のEC浸透率は全カテゴリー平均で13%、今後5年間で21%まで伸長すると予測されていますが、諸外国と比較して低いのが現状です。中国は29%、韓国は41%と日本よりも大きく浸透しています。商品特性・カテゴリーによって異なりますが、先行する中国では一部の商品カテゴリーでEC浸透率が低減している状況も見られます。日本はEC化の後れをチャンスと捉え、海外の先行事例から進化する顧客の要求を先読みし、他社に先んじて勝機を掴めるポジションにあるとも言えます。
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