りんご飴ブームの火付け役である「ポムダムールトーキョー」。宣伝広告費をゼロに抑えて、ファンによる口コミだけを力にして成長を続けている。口コミの力を理解しつつも、あえて口コミには頼らないという自然体の経営法について代表の池田喬俊氏に聞いた。
秘密基地のような、ステキな居場所をつくる
──りんご飴専門店を始めた理由を教えてください。
「今までにないものをつくって、世の中を驚かせたい。そして、それがみんなにとっての新しい居場所になったらステキだな」という思いから店を始めました。ですので、実を言うと、最初は「りんご飴」という商品は目的ではなくて、あくまでも「ステキな場所をつくるための手段の1つ」でした。特にビジネス的な勝算もなく、りんご飴の持つフォトジェニックさによる物語性と、細部までこだわって作ったりんご飴の美味しさだけを信じて、新宿で第1号の店舗を始めました。
──宣伝広告費をかけない理由はなぜですか。
宣伝広告は絶大な力を発揮してくれるので、利益を上げたいときには最適だと思います。ただ、その効果は即時性はあるものの、持続性がないんです。いまだけではなくて、1年後2年後を考えたとき、宣伝広告で得た売上を維持するには、さらに宣伝広告を打ち続けないといけない。それでは自転車操業であり、苦しいのではないかと感じました。そういった肌感覚があって、宣伝広告にかけるお金を今あるお店に、りんご飴そのものにかけるようになりました。誤解を恐れずに言うと、「お店を流行らせたくない」という気持ちが根底にあります。
ポムダムールのミッションが「お客さまにとって楽しい秘密基地のような居場所を1日でも長く存続させる」というものだからです。りんご飴を売って利益をあげているのは、場の存続のためでしかありません。経営者の多くが「利益をあげることそのもの」を目的にしているのとは目的が異なりますので、採るべき手段もまた違っています。
過度に流行ってしまうと、今あるバランスが崩れてしまいかねません。そうすると、長年支えてくれたファンの皆さんにとって居心地の悪いポムダムールになってしまうかもしれない。それが怖くて「看板も宣伝広告費も出さない」のです。「日本初のりんご飴専門店」という責任がありますし、とにかく、この灯を消さないために必要なことを選び取って営業しています。