販売促進の専門メディア

           

口コミを使う! 店舗 新プロモーション

コロナ禍で復権した「こだわり消費」調べ、考え、選び抜く消費者

松下東子氏(野村総合研究所)

事業や店舗運営を行っていく際には、コロナ禍による消費者価値観・意識の変化を知り、ますます重視度が高まりつつある「口コミ」をしっかりと味方につけていくための方策を検討していく必要がある。本稿では、野村総合研究所の松下東子氏が、同研究所が1997年から実施するアンケートをもとにコロナ禍が日本の消費者にもたらした影響について、消費意識に焦点を当てて解説する。

*NRI「生活者1万人アンケート調査」
野村総合研究所が1997年から3年ごとに実施。日本全体の縮図になるように無作為抽出された全国15~79歳の人々を一戸一戸訪問し、消費者の実態を長期時系列でトラッキングしている。

様々な消費意識の中で、野村総合研究所では、「こだわり」感度と「価格」感度を切り口として消費者を4象限4つの消費スタイルに分け、その構成比の変化を追いかけています(図1)

図1 4つの消費スタイルの構成割合の推移

「プレミアム消費」の復活 こだわりに重点シフト

最も大きな構成比の変化があったのが、2012年から2015年。ここでは、高くてもよいからとにかく楽に面倒なく買いたい、とする「利便性消費」スタイルが7ポイントも増えました。2015年といえば、スマートフォンの急激な普及が進み、消費者は多すぎる情報の中で自分のこだわりを見つけることに疲れてしまう、「情報疲労」の状態にありました。

雇用情勢が改善し、消費増税も相まって共働き家庭が増えたこと(=お金はあっても時間がない忙しい消費者が増えた)、また、「これ1つでいくらでも時間がつぶせてしまう」スマートフォンを持つことで、消費のための情報収集に割く時間やエネルギーがそちらに奪われてしまっていたということもあります。2015年から2018年にかけては、構成比はステイの状態で、2015年の環境・状態が維持されていたようです。変わらずスマホの利用は進み、雇用状況もよい状況が続いており、個別の消費意識でみても大きな変化はありませんでした。

そして、今回コロナ禍を経た2021年。2012年以降頭打ち状態にあった「プレミアム消費」=高くてもよいから自分の気に入ったものを買いたい、が2ポイント増えました。さらに、2015年に大きく減少した右下第4象限にあたる、しっかり情報を調べて、お気に入りのものを少しでも安く買うという「徹底探索消費」が、1ポイントとわずかではありますが回復しました。全体で見て、4象限の構成比の重点は、右側(「こだわり」)寄りにシフトしたことになります。

コロナ禍で生まれたもの 余剰時間と生活防衛意識

この背景には、余剰時間の増加と生活防衛意識、つまり先行きを見据えた節約意識の2つがあると考えられます。

感染拡大防止のための外出自粛、テレワークの普及により、消費者の「おうち」時間は大きく増えました。生活者1万人アンケート調査からは、就労者の22%が、調査時2021年の8月までの1年間にテレワークを実施しており、そのうち4分の1にあたる5%は120日以上と、週2日以上のテレワークが常態化したヘビーユーザーであったことがわかっています。

また、余暇・レジャーの動向でも、コロナ禍に入るまでは大きく伸長していた、映画や外食、コンサートなどの「街レジャー」が大きく減少し、海外旅行は言わずもがな、国内旅行も顕著に減少しました。

さらにチャネル利用では、ネットチャネルの台頭に対してリアルの体験やイベントなどエンターテインメントとの融合により対抗していたデパートやショッピングモールなどの利用率・利用頻度がやはり激減、ショッピングに出かけることも減ってしまいました。まさに一億総巣ごもり状態にあったのが、コロナ禍における消費者です。

こうした中、消費の情報収集のために使える「時間」は増えましたが、逆に減ってしまったのが先行きに使える「お金」の見通しです。図2は先行き1年間の景気の変化について、各調査年で聞いたものですが、今回2021年8月調査時に「悪くなる」と答えた人は46%となり、リーマンショック後の2009年、東日本大震災後の2012年調査時を上回る...

あと60%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

口コミを使う! 店舗 新プロモーション の記事一覧

りんご飴ブームの火付け役 口コミは起こすのではなく、起こる場に
服というプロダクトを通じて顧客との新たなコミュニケーション確立へ
不用意な口コミ対応を防ぐ 否定的な口コミの法的位置付けとその対応
Z世代の意見を取り入れ幅広い世代に支持される「キラキラドンキ」
口コミ返信はPRの一部!「誰もが見るもの」としての重要性を意識
決め手は『隙』の創出 「かつや」が話題を呼んだ『拡散』の秘訣とは
口コミで集客無双!明暗を分ける最初の100件の投稿
投稿される場所や種類で変わる?消費行動に与える「口コミ」の影響
コロナ禍で復権した「こだわり消費」調べ、考え、選び抜く消費者(この記事です)
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する