コロナ禍中も客単価上昇、徹底的な感染防止策を施して2021年度グッドデザイン賞も受賞
JR五反田駅西口から歩いて約5分、山手通りとぶつかる交差点手前を右に入った路地にあるのが、立ち吞みも行う酒屋の「桑原商店」だ。同店はこの地で店を開き100年を超す老舗酒販店。かつては表通りに店舗を構え、現在の店舗は倉庫兼用の角打ち店だった。
その後、アート関連の仕事をしていた四代目の桑原康介氏が跡継ぎとして店に入ったのが転換点となる。「母や叔父など親族一同で働いて暮らしていけるよう、皆で倉庫をリノベーションしました」と桑原氏。建築家長坂常氏主宰のスキーマ建築計画に設計を依頼し、新たなスペースを作り上げていった。
オモテには引き戸があり、夕方以降はネオンサインに店名と住所が路地の中にぼうっと浮かび上がる粋な造り。店の奥には特注の巨大な冷蔵庫が置かれ、その照明は酒が劣化しにくいLED仕様。中には桑原氏の人脈により各地から取り寄せた日本酒200種がずらり並んで壮観だ。
「蔵元がアーティストで、生み出される酒がアート作品。展示販売する私たちはキュレーターです」と桑原氏は長い経験を持つアートの仕事になぞらえて語る。フードメニューも日本全国の産地と連携する。「日替わり総菜三点盛り」は桑原氏が携わってきた「大地の芸術祭」の開催地、越後妻有のおかみさんたちから届く手作り素材を生かす。「調理はシニア層の多いウチの家族が、無理のない範囲で手を加えて...
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