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売上を伸ばすための基礎知識 販促の基本

「位置情報」の活用で、時空を超えたアプローチも可能に?

石塚 修(クロスロケーションズ)

「行動」という事象そのものを見て顧客を理解し、その行動に寄り添ったコミュニケーションを仕掛ける。位置情報を活用した新次元プロモーションの醍醐味とは。

ここ数年で位置情報データを、より高精度に高頻度でリアルタイムに近い情報として捕捉できるようになりました。「ロケーションテック」と呼ばれる、新しい技術を活用した位置情報サービスが活性化しています。特に、スマートフォンの普及でユーザーの行動がビッグデータとして解析できるようになったため、これをマーケティングに活用しようというビジネスが次々に誕生しています。

業界団体の取り組みとしては、2019年にLBMA Japan(Location Based Marketing Associationの日本支部)が活動開始、2020年に一般社団法人化されたばかりという、とてもホットな業界です。

位置情報の活用で広がる可能性

スマートフォンがやりとりしている電波の中で、位置情報を捉えているものは数種類あります。

ひとつは携帯電話の基地局からの4Gや5Gの回線電波。回線電波は広範囲で位置情報の捕捉が可能です。電波の強度は1kmほどだといわれていますが、位置情報の誤差は100mになる場合もあり、マーケティング目的だと正確さが足りないような印象です。

一方、地図アプリや天気予報アプリ、歩測系のアプリなどは主にGPSの信号を利用しています。GPSは位置情報の測定に最も活用されており、近年では「ポケモンGO」を代表とする位置情報活用のゲームなども人気になりました。測位の誤差は10m程度といわれています。

近距離でやり取りされる信号としてはWi-FiやBluetoothもその類です。それぞれアクセスポイントとなる端末(Bluetoothの場合ビーコンと呼ばれるもの)を建物内に設置して送受信されるため、有効半径は10m程度ですが、測位誤差は数メートル以内といわれています。さらに、最新のスマートフォン端末にはUWB(Ultra-Wide Band)と呼ばれる超広帯域無線通信に対応したチップが搭載されており、これも近距離での位置情報サービスに活用され始めています。

また、スマートフォン以外でも、ウェブにつながっている端末のIPアドレスから地域を推定したり、店舗内のカメラで画像情報を捉えて人々がどのように回遊しているのかを分析するサービスも、位置情報の活用といえます。IoT技術の発展により、自動販売機やプリンターからの発信で飲み物やトナーの補充を効率的に実施したり、自動車の走行データからCO2排出量の多い地域を可視化したり、見守りタグで迷子や失くしものを防いだりと、位置情報を活用して社会の問題を解決しようという施策も広く実用化されてきています(図1)

図1 マーケティングに活用される主な位置情報データ

時空を超えたアプローチも可能に?

位置情報を使ったプロモーション手法を3つご紹介します。スマートフォンから取得される位置情報を利用し、そのままスマホのアプリに広告やメッセージを出す方法、あるいは分析後にオフラインで展開する方法です。

①リアルタイムジオターゲティング

地理空間上にジオフェンスと呼ばれるエリアを囲い、そのエリアに入ったユーザーがアプリを開くと広告が配信されるという仕組みです。DSPなどのプログラマティックな配信システム経由でユーザーの現在地に合わせた広告やメッセージを配信することが可能。新店舗の開店告知やイベントに合わせた訴求などとも親和性が高い手法です。

また、スマホのアプリで通知サービスをONにしているユーザーが店舗周辺に来たらバーゲンの案内をプッシュするとか、店舗にチェックインしたら割引クーポンを出すとか、あるいは館内のビーコンを見つけて宝探しや陣取りゲームに参加してもらうといったことができます。このようなアプリ経由でユーザーとのコミュニケーションを図る施策も、位置情報で「今、そこにいる人」のリアルな行動を捉えた販促手法になります。

②ヒストリカルターゲティング

これに対して「過去○○にいた人」という条件でターゲティングし、広告を表示することも可能です。この手法では、そのユーザーと場所とは何らかの関係があると推測されます。例えば、昨シーズンにスキー場にいたユーザーに再訪を促すとか、スキーグッズを提案するというキャンペーンができます。

③商圏ターゲティング(ロケーショングラフ)

こちらはスマートフォン経由での訴求に限定しない活用方法。得られた位置情報の分析結果を地域セグメントに落とし込み、その場所に対してプロモーション活動を仕掛けていく方法です。

店舗の訪問客の位置情報を分析すると、どの地域の居住者の来訪が多いのかなどが分かり、その市区町村や町丁目をセグメンテーションの基準とすることができます。位置情報のDMPからセグメントを切り出すイメージです。

地域を限定したら、そこに新聞折込やポスティングをしたり、OOH(交通広告やサイネージ)を展開したり、あるいはスマホへの広告配信、さらにはその地域のパネルに対してアンケートを取ることも可能です。デモグラフィック(性別、年齢、収入など)やサイコグラフィック(ライフスタイル、価値観、活動など)、ソーシャルグラフィック(SNSなどデジタル空間での人々の意見を見える化したもの)と比べて、人々のリアルな行動を切り口とした...

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