プロモーションの手法として、キャラクターIPとのコラボレーションを見ない日はなくなるほど、多くのキャンペーンが実施されている。そんな「コラボキャンペーン乱立時代」の中で、しっかりと成果を出すためには何を意識すればよいのか。これまでもIPコラボキャンペーンの成功事例を積み上げているダイドードリンコから学ぶ。
大阪に本社を置く飲料メーカー、ダイドードリンコ。ロングセラー缶コーヒーブランド「ダイドーブレンド」をはじめ、多くの人気商品を展開している。
コラボ注力の始まりは2010年の「仮面サイダー」
そんなダイドードリンコが実施するキャンペーン手法のひとつとして印象的なのがキャラクターIPとのコラボレーション。これまでも、多くのIPコラボレーション企画で、消費者の心をつかみ、売上を拡大させてきた。
同社のIPコラボレーションキャンペーンの始まりは、2010年に遡る。石森プロ、東映の『仮面ライダー』シリーズとのコラボレーションとして、「仮面サイダー」を発売。パッケージには、昭和に放送された仮面ライダーの胸から変身ベルトのあたりをデフォルメして描いたものを使用し、大きな話題になった。
ダイドードリンコのブランド戦略グループ土屋淳一氏によると、この「仮面サイダー」発売をきっかけに、同社内でのIPコラボレーションキャンペーンへの注力が始まったのだという。
「2010年当時、当社も多くのブランドを抱えていましたが、ありきたりなキャンペーンでは他社製品との差別化を図ることが難しいと感じていたときでもありました。そこで企画したのが『仮面ライダー』とのコラボレーションです。今こそキャラクターとコラボレーションしたキャンペーンを見ない日はなくなりましたが、『仮面サイダー』を発売した頃は飲料メーカーとIPがコラボすることは少なく、当社はいわば先駆けと言えるような存在だったと思っています。業界内でも珍しい取り組みだったことから、業界内でも話題になったのではないでしょうか」(土屋氏)。
その後、2013年には『ドラゴンボール』(集英社)、2019年には『名探偵コナン』(小学館)など、数々の人気コンテンツとのコラボレーションを成功させている。
売上は累計1億本
爆発的にヒットした鬼滅コラボ
これまでも多くのキャンペーンを実施してきたダイドードリンコだが、その中でも2020年10月に展開された、同社の缶コーヒーブランド「ダイドーブレンド」と『鬼滅の刃』(集英社)とコラボレーションしたキャンペーンは、大きな話題になった。
当時発売したのは、人気テレビアニメ『鬼滅の刃』のキャラクターが缶それぞれに一人ひとりプリントされたもの。「ダイドーブレンド ダイドーブレンドコーヒーオリジナル」「ダイドーブレンド 絶品微糖」「ダイドーブレンド 絶品カフェオレ」の3シリーズ、全28種類のコラボレーション缶を販売した(図1)。
発売を開始した2020年10月は、『鬼滅の刃』が映画公開を10日後に控えていた頃のこと。市場でもいわゆる「鬼滅フィーバー」が巻き起こっていた時だった。
「業界全体で見ても缶コーヒー市場は停滞しています。当社でも、『鬼滅の刃』とのコラボ缶が発売する前の2020年2~9月のコーヒー飲料販売量はあまり思わしくない状態が続いていました。コロナによる外出自粛で自動販売機での購入頻度が減少したり、そもそも若年層の缶コーヒー離れという潮流もあり、苦戦していたのは...