ECシフトが加速して1年 改めて整理する「ECと実店舗」の違い
コロナによって顧客とのリアルな接点を持つことが難しくなった2020年。この1年は、ECシフトが急加速し、多くのECが立ち上がった。ここでは、見直すべき点を見る前に改めてECと実店舗の違いを整理する。
EC『総点検』
ECの買い物客にとって、初めてリアルな体験となるのが、商品の受取時だ。そこの体験が悪い印象になってしまえば、EC自体の評価につながる。そのラストワンマイルを最適化する上で、見直すべきポイントについて、青木剣太郎氏が解説する。
年々上昇する日本の宅配便取扱個数は43億個(2019年度)を超えました。当社とパートナー契約を締結させていただいているヤマト運輸は2020年度の宅配便取り扱い実績が前年度比16.5%増で年間20億個の大台を突破し、日本のECはコロナを契機に一気に加速しています。
この大きな変化によってあらゆる企業がECに対して本格的に取り組まざるを得ない状況の中、今回はECのラストワンマイルを最適化する上で見直すべき3つのポイント(顧客体験設計、返品、SDGs)についてお話しいたします。
まず、実店舗を中心に小売業を営んできた企業がこれまでの考え方をそのままECに適用することだけでは顧客ニーズに最適化できないというケースをみていきます。
具体的には、良い商品を他社よりも安く売る、にフォーカスが当たりすぎて、ラストワンマイルと言われる最後の配送部分の顧客体験まできちんと設計できていないことです。ユーザーの求める多様なニーズに対応しきれず、結果として使い勝手の悪いECショップ、という印象を持たれ、リピート率が低下し、ロイヤルカスタマー化できないというパターンです。
2007年にiPhoneが発売されてから14年が経ち、今ではスマートフォンを持っているのが当たり前という状況の中、企業はSNSやアプリを通じて顧客と直接つながることができるようになりました。これは今までの店舗での販売を点で捉える時代から、スマホのネット常時接続を前提として顧客との接点を線として捉え直し、その購買〜利用体験の全体を設計し直す時代にシフトしていることを意味しています。
その購買〜利用体験の中でラストワンマイルの果たす役割が非常に重要で、いかにユーザーがストレスなく商品を受け取れるか、というところがECショップの評価に直結してきます。
DXを進めるヤマト運輸は昨年EC配送に特化した新しいサービス「EAZY」を立ち上げ、対面での受け取り以外に置き配サービスを開始するとともに、配達直前まで受取場所を変更できるオプションの提供も開始しました。
これは刻々と変わる顧客の配送ニーズに対してデジタルデータをリアルタイムに活用するシステムを構築することで初めて実現できることです。これによって例えば、自宅に届く予定だった荷物を外出のタイミングに合わせて、近所のコンビニやドラッグストアなど指定の場所で受け取るといったことができるようになりました。
ECというバーチャルな店舗での購買体験では購入時に商品を実際に見ているわけでもなく、店舗スタッフに接客されているわけでも...