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令和元年 新しい日本のプロモーション

「売り手側が売りたいもの」を提示 顧客体験の変化に注目しよう

及川謙一氏(ブルーグース合同会社 CEO)

平成はオンライン広告の時代。インターネットが流行語を取ったころから、広告商品の開発・改善と販売手法をくり返し、いまや「マスメディア」としての地位を持つ。そうしたオンライン広告にネット小売最大手アマゾンが着目した。新たな収益源としての開拓が進むかもしれない。

    2008
    「アマゾン広告」がスタート

    開始当初は限られた取引先のみが利用できたが、このほどオープン化し、利用を呼びかけている。

1989→1998
「楽天市場」が立ち上がりアマゾンが日本法人を設立

「インターネット」が流行語になったのは平成7年、1995年のことでした。利用者はまだごくわずかでしたが、「Windows 95」の発売、NTTの「テレホーダイ」(※1)開始も手伝って話題になりました。

※1 一定の条件を満たす特定の電話番号には、夜11時~朝8時の間、通話料金が定額となるサービス。

「インターネットで商品を売る」という挑戦をした企業は、その前からあったようですが、飛躍的に成長を遂げたもののひとつは、1997年オープンの「楽天市場」です。

「楽天市場」はいわゆる「モール型」と呼ばれ、商品を売りたい販売事業者から得る「出店料」と「販売手数料」「システム利用料」などを得るのが主な収益源となります。

いまやEコマース最大手となった米アマゾンが、日本法人となるアマゾンジャパンを設立するのは、その翌年の1998年でした。「Amazon.co.jp」のオープンは、その2年後の2000年。当時は書籍販売がメインでした。

2008→2018
アマゾンが広告販売を本格化 小売ECサイトも追随?

いったん時間を現代に戻しまして、米アマゾンがサイト内広告に力を入れはじめたことについて紹介しておきます。2008年ごろからの動きです。

開始当時は「3P Ad(Third Party Advertising)」の名称でごく一部のベンダー(アマゾンと直接取引をしているメーカーなど)のみに開放していたのですが、いまでは「Amazon Advertising」と称して、ベンダーやセラー(販売事業者)、そしてアマゾンと直接取引のない企業にまで精力的に販売しています。広告商品には「スポンサープロダクト広告」や「スポンサーブランド広告」のほか、「ディスプレイ広告」「Amazon DSP」などがあります。

アマゾンがなぜいま、広告販売なのか。同社はいまでこそモール型も運営しているとはいえ、基本的には小売業です。つまり粗利が利益の源泉ですから、広告販売よりも、商品を安く仕入れ、多く売ることに集中したほうが事業の成長に直結します。実際、そこにフォーカスしてきたはずです。

一方、前述の「楽天市場」のように、モール型ECサイトは出店者からの手数料が収益源です。出店者を集めるには、そもそも多くのトラフィック(つまり集客力)が必要ですし、オプション広告といった形で、出店者から広告収益を上げることもできます。そこでは、古くからサイト内広告が活用されてきました。

アマゾンが広告販売に踏み込む理由はなにか。ひとつには、同社の所有する、圧倒的な顧客の行動データの収益化(マネタイズ)ではないかと考えられます。広告を出す主な企業は、イコール商品の仕入先企業ですが、広告を利用すれば商品を訴求できるし、アマゾンにとっては利益の確保にもつながります。

顧客の購買に関する膨大な行動属性データを活用できる利点を生かして取引先企業のビジネスを後押しするという、アマゾンの強みを最大限に生かした結果と言えるでしょう。

これまでECサイトでは、仕入先メーカーのバナーをトップページなどに貼り、特集ページのランディングページを作成して誘導する、いわゆる「バナー広告」が主流でした。

しかしアマゾンの一連の動きを見て、ビックカメラやヨドバシカメラ、ZOZOTOWN、アスクル、モノタロウなど、商品を仕入れて販売する店舗型のECサイトなども追随することが考えられます。ECサイトの顧客の行動属性を活用した広告の流れがさらに発展するかもしれません。

アマゾンにはこれまで、顧客体験を高めることを企業文化として取り組んできた歴史があります。それは、アマゾンサイト上のちょっとした表記を変更する際でも「それは顧客にとってよりよいものかどうか」が議論となるほどです。

そんなアマゾンが広告販売に大きく舵を切ったことで、アマゾンのECサイトの顧客体験が、顧客自身にどう評価されるかは、ECサイトの広告戦略を考える上で大きなポイントとなるでしょう。

ユーザーが欲しい商品をストレスなく提示することがこれまでのアマゾンが考える良い顧客体験でしたが、広告という「売り手側が売りたいもの」を提示することで、顧客体験がどう変化するか。この点は、多くのECサイトにとって注目すべきポイントだと思います …

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