可処分時間と可処分所得のバランスが取れなければ「心の豊かさ」を保つための消費は動かない。可処分時間の"フロンティア"として期待されるのが「ナイトタイムエコノミー」だ。政府も振興に動く「ナイトタイムエコノミー」について、国際カジノ研究所の木曽崇所長が解説する。
2018~
クラブが宣伝の場に?
2019→
可処分時間のパイを増やすナイトタイムエコノミー振興
「可処分時間」とは「自分で自由に使える時間」を意味し、近年、「自分で自由に使える所得」を意味する「可処分所得」との両輪を成す概念として用いられることが増えてきた用語である。
衣食住に足り、消費者が「心の豊かさ」を求めるようになった現代社会における商業活動は、消費者の可処分所得の奪い合いであるのと同時に、可処分時間の奪い合いであるとも言える。
人間が生きるのに欠かせない、衣食住にまつわる消費は、消費機会の有無にかかわらず、人間がそこに存在する限り必ず発生する。しかし、衣食住に関連しない「心の豊かさ」を満たすための消費は、それに必要な所得を持ち得たとしても、「自由に使える時間」がなければ実現されない。
こうした可処分時間の奪い合い時代の到来によって、注目が高まっている経済振興策が「ナイトタイムエコノミー」である。
ナイトタイムエコノミーとは、日没以降から翌朝の日の出までに行われる経済活動の総称であり、現在、政府はこのナイトタイムエコノミーの振興を日本経済の活性化策の一環として打ち出し始めている。日中に偏重しがちな日本経済の消費活動を日没以降に向かって大きく広げることで、国民全体が保有する可処分時間のパイそのものを増やし、その先に発生する消費の拡大につなげる狙いがある。
2019→
バブル時代の狂騒は異常事態 ポスト・バブルのあり方を模索
1986年から1991年まで続いたバブル景気の頃、我が国には間違いなくナイトタイムエコノミーの「萌芽」が垣間見られる時代があった。栄養ドリンク「グロンサン強力内服液」(当時=中外製薬)がCMキャラクターに高田純次を起用し、「5時から男」というキャッチフレーズで一世を風靡したのは1987年のことだ…