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効果のある店頭ツールの条件

店頭のインバウンド対策 訪日客の潜在心理を捉えたアプローチ

柳瀬真弓(Reflections general office 代表取締役)

中国人訪日客による「爆買い」に象徴されるように、いまや訪日客を無視して販売促進を考えることはできない。それは、店頭ツールにおいても例外ではなく、訪日客の意識や気持ちを知り、彼らに対応したツールづくり・展開が必要だ。

「日本旅行ブーム」ではないという前提

「訪日客向けツールの作り方」というテーマにおいて、先に結論を述べるとすると、決して「このロジックを守れば正解である」と絶対公式があるわけではない。他国のお客さまへの対応マニュアルに「中国人はこう」「タイ人の行動傾向」など相手を分析するような論が多いが、長年中国に滞在し、外から日本を見る目線を持つ筆者が強調したいのは、「日本人の特徴を客観的に見る」ことの必然性である。

直接の言葉を介さない店頭での販促施策から互いの国を理解し、歩み寄れるプラスのコミュニケーションを生み出す、訪日客の気持ちに寄り添った店頭アプローチについて考えたい。

2015年の訪日外国人旅行者数(推計)は前年比47.1%増の1973万7000人。15年にクルーズ船で日本を訪れる訪日客数が初めて100万人を突破し、16年の訪日客数増加を見込んだ日本政府は受け入れ体制の整備を進める考えである。今年も円安基調により日本へ旅行しやすい環境が続く公算が高いという経済的な要因に加えて、東京、大阪、京都を含む「ゴールデンルート」以外のエリアでの魅力的な旅行先の増加、認知度上昇による観光的な要因により、過去最高の訪日客数を予測している。

日本国内では「日本旅行ブーム」であると謳われているが、海外現地の心理では「国外旅行ブーム」における日本という、一つの選択肢であるという理解を前提としたほうがいい。その上で、具体的な訪日客アプローチの方向性を考えるべきであるということを、現地目線をもって強調したい。

筆者はよく、「インバウンドによって、日本国内で訪日客へ販売すること」と「アウトバウンドによって海外現地で販売すること」の根本的な施策の基礎は同じであると語ってきた。中国、台湾、タイなどのアジア圏、欧米諸国など各国旅行者の国境を越えて、目の前のお客さまに寄り添い、心をつかむ店頭ツールを作るには下記のキーワードが共通して必須となるであろう。

『各国言語への配慮と、現地目線で顧客心理に寄り添えているか?』『日本人のあたりまえを払拭できているか』『各国どのようなターゲットへ訴求するべきかが具体的で明確か?』これらのキーワードを一言でまとめるならば、「日本人の常識を払拭し、現地目線に重きを置いたアプローチ」と言える。以下、一つずつ具体的に紐解いていこう。

各国言語への配慮と、現地目線で顧客心理に寄り添う

中国を例に挙げると、中国現地におけるPOPの役割はわりとシンプルであることが多い。日本のように商品やサービスに対するコンセプトやストーリーが店頭POPで語られることは少なく、「安い」「人気」「○○で販売実績No1」などわかりやすく、キャッチーなコメントが多用される。そのシンプルなキャッチフレーズに紐付けられているのは、多くの場合、現在の中国における主要SNSツール「微博」「微信」のロゴアイコンである。

では、中国ではシンプルなキャッチフレーズがウケるのかと言うと、決してそうではない。購買パターンが消費者サイドの情報収集に偏る日本と異なり、中国ではECなどのオンライン販売、店頭でのオフライン販売、その両方で店員と顧客との直接的コミュニケーションを重要視する。その会話は非常に密であり、まるで友人とのチャットのよう。わからないことは直接聞くという国民性が根底にあるのだ。つまり、中国国内では店員とおしゃべりしながらモノを買うことがより自然で、納得を得られる方法なのだ。

ただ、ここで販売側として考えるべき対策は、中国国内と同じようにコミュニケーションが取れる通訳スタッフを配置することだけとは限らない。商品、サービスに対してより親近感を感じてもらえる具体的なツールによって、店頭でおしゃべりするライブ感をサポートすることは十分可能だ。以下、具体例を挙げてみよう。

(1)現地で流行している表現、キーワードを使用したPOPや動画で共感を促す。

(2)販売する商品が中国現地において、どのようなポジショニングなのかを意識し、明確にわかりやすい表現で、商品説明を新たに作成する。

(3)商品キャッチフレーズを既存のものを翻訳せず、新たに作り直す。

(4)現地で使用される主要SNS(微博・微信)のアイコンを設置、現地と同じような目線で違和感ない売り場を作る。

(5)現地の基本習慣やNGワードを知り、“他の人へ自慢したくなる”パッケージやPOPを作成する。

一見、相手目線で新たに作り直すということは面倒な作業なように思えるかもしれない。しかしここで気付いていただきたいのは、訪日客へ向き合うことは対日本人へのプロモーションで定着したイメージの払拭につながり、新たなブランドイメージを打ち出せる、非常に意味ある一歩であるということだ。

中国人客は、店員に対して「友達同士のチャット」のような密なコミュニケーションを求めている。

日本人の平均さと当たり前を疑う

各国へのローカライズ化とひとことで言っても、日本国内に住みながら訪日客のフィルターで物を見ることは簡単ではないだろう。ここでは、完全に常識化してしまっている日本人の当たり前を知ることで、訪日客が捉える日本の魅力と疑問に感じる点を浮き彫りにしてみたい。国外目線で日本人を見た時に言えるのは、日本人が元来持つシャイな気質と単一民族概念により、その独特の平均さを自覚する意識が希薄だ。

インバウンドを基軸に考えると、各国の訪日客に響くフックポイントは日本人とは異なる。日本人に喜ばれ、理解されるセールスポイントでも ...

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