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効果のある店頭ツールの条件

消費者の心を刺激する6つの心理学的法則

四元 正弘(四元マーケティングデザイン 研究室 代表)

あなたがある広告に惹かれたり、商品を購入したりする時、その意思決定の大半は無意識に行われている――。なぜ、人は惹きつけられてしまうのか。その仕組みを心理学から見ていくことで、販促ツールに活かすこともできるだろう。

無意識下の法則が消費者を動かしている

唐突だが野球の外野者を想像してほしい。バッターボックスから鋭い打音が聞こえ、白球が打ち上がる。それを見て、外野手はまず「瞬発的かつ無意識」に予測落下地点にダッシュする。そして予想地点に到達し、ボールを確認した後に、「慎重かつ意識的」な捕球動作に入るという二段階の動作を連続して行う。

この前半の動作、すなわち何かの行動に際して最初の「瞬発的かつ無意識」な態度変容を心理学では「ヒューリスティック」と呼ぶ。あらためて、ヒューリスティックとは、問題を短絡的に解決するために、人の脳が無意識のうちに用いている思考のことを指す。

それによって、例えば「赤い食べ物」を見ただけで、「辛そう」といった判断をくだすことができる。ただし、判断の時間は早いが判断結果には偏り(バイアス)を含んでいることが多く、必ずしも正解ではないのである。

実は、ヒューリスティックは消費にも重要な概念だ。消費とは、膨大な商品や情報を前にして、「瞬発的かつ無意識」に有望商品を絞り込み、その後、どれがベストかを「慎重かつ意識的」に検討して特定商品の購入に至るプロセスだ。

『心脳マーケティング』(ジェラルド・ザルトマン著)によると、人間の思考や行動のうち意識下での自覚はわずか5%に過ぎず、残りの95%は無意識下だと説く。個人的に95%の信憑性はかなり怪しいものの、「消費にまつわる思考や行動の大半は、無意識下のヒューリスティックによる」という理解は衝撃的な知見と言わざるを得ない。

つまり、ヒューリスティック、言い換えれば「無意識の心理ルール」を理解せずにマーケティングを考えても暖簾に腕押し。消費者を動かすことはできない。そこで、心理学・行動経済学・脳科学等の分野で確立している代表的なヒューリスティックを紹介しつつ、販促ツールに役立つ知恵を検討していきたい。

販促にすぐ活かせる6個のヒューリスティック

1. 確実性の法則(プロスペクト理論)

(1)あなたを含む全員が確実に7000円をもらえる。

(2)1/4の確率で3万円をもらえるが、外れたら1円ももらえない。

二者択一で選ばせる実験では、(2)の方が3万円×1/4=7500円となるため、(1)の7000円より期待値が高いのだが、大半の人は(1)を選ぶ。その理由として挙げられるのが、「人間は利益を目の前にすると、その利益を失うリスクを過剰評価する」ということ。確実に7000円が手に入る提案を前に、「この7000円を失うなんて絶対に嫌だ!」といきり立ってしまい冷静に判断できなくなるわけだ。

また、「利得は実際の金額より低めに感じる。3万円は7000円の4倍強だが感覚的には3倍程度にしか感じない」という説明もよくされる。人は、壮大なゴールよりも足元のリターンに興味を引かれがちで、特に男性はその傾向が強いようだ。

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販促ツールへのヒント1(確実性の法則)

プレゼントや景品を供与する場合、言葉で表現するだけでは訴求力が弱い。供与内容の写真などを明示して、リアル感を出すことが重要。

また、後日の抽選よりも「今すぐ」「もれなく全員」の方が好ましい。そのような提示で供与内容を魅力的に演出し、顧客からの評価につなげることは、結果的に売上向上に寄与して費用対効果の改善にもなる。

2. ポジティブの法則 (フレーミング理論)

「成功する確率は70%」と「成功しない確率は30%」。この2つの表現は同意だが、その後に「挑戦しますか?」と尋ねられた場合、前者の反応率の方が圧倒的に高い。これは心理学でフレーミング理論と称される現象で、物事の見方やフォーカスの当て方によって、同じ内容でも人はまったく異なる印象を受けるのだ。一般的には「よりポジティブな」、換言すれば「少しでもネガティブではない」感じ方をさせる表現が人を動かしやすい。

ちなみに、「不良品率が10%から5%に低下」と「不良品率が50%減」を比較した場合、後者の方がポジティブに感じられるという理由で顧客の反応が良いという。また、「1日200円の支払いだけで・・・」と「1日コーヒー1杯を我慢するだけで・・・」とでは後者の反応が良い。「1日200円」の方が支払いが確定的で、しかも出費額を明示する点でネガティブ感がより強いためだ。

虚偽は論外だが、間違っていないのであれば少しでもポジティブで …

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