世界で最も権威ある庭と花の祭典と言われる「チェルシー・フラワー・ショー」で、前人未踏の3年連続ゴールドメダルとベストガーデン賞をダブル受賞するなどの快挙を達成し、「イオンモール幕張新都心」「ウェスティンホテル東京」などの庭園づくりも手掛ける、庭園デザイナーの石原和幸氏。海外で目にした面白いプロモーション事例とともに、緑を用いた店舗の演出法などを教えもらいました。
石原和幸氏のオフィスにて撮影。緑に溢れ、ふくろうや子猿などと共同生活する仕事場。
イギリスで目を引いた洗練されたディスプレイ
─店をどのような視点で評価されていますか?
私の場合は、庭師という職業柄、「外観の美しさ」と「集客力」でお店の良し悪しを判断しています。季節感を表現していたりする綺麗なウインドウディスプレイがあると、ついつい食い入るように見てしまいますね。
特に、毎年ガーデニングのショーに参加するために訪れているイギリスのチェルシー地区には、店の世界観と合ったウインドウディスプレイが多くあり、目を引きます。日本では、たいがい商品を身につけたマネキン人形が置かれているだけですが、イギリスでは、「生もの」を用いたディスプレイが主流。例えば、手袋屋さんでは7、8千本もの黄色のバラをあしらって作った、人の背丈ほどもある手のモニュメントを飾っていたりします。こんなインパクトある演出なら、誰もが注目しますし、お店に入ってみたくなりますよね。
また、ブーツ屋さんでは、濡れないブーツを告知するのに、格好いい服を着たモデルさんが、ウインドウの中に入り、バケツの中に足を入れてポーズをとっていました。近寄ってよく見ると、ブーツが完全に水の中に浸っている。でも足は濡れない、ということをアピールしているんですね。
あとは、フルーツの輸入業を手掛けている会社では、女性がスライスしたキウイでできたドレスを着て、サンプリングをしていました。中が見えそうで見えないようなギリギリのドレス。男性たちが思わず「ワオ!」と声を上げて、食いついていましたね。ほかにも、温室栽培に使う防虫用のテントウムシを販売する専門店では、美しい女性がテントウムシのコスチュームでビラを配っていました。日本のゆるキャラ風ではなく、目を引いて、とてもお洒落なんです。イギリスでは、生ものの活用によって、インパクトのある店頭演出を実現できることが、認知されているのでしょう。
集客力で言えば、私どもで庭をプロデュースしている ...