2007年にオープンした原宿店。「アウトドア商品の社会的価値を変える」という考えのもと、これまでのアウトドアショップのイメージとは全く異なる雰囲気で、多くの人が来店しやすくなっている。
店舗スタッフは山に関する教師
だからこそ相手を見極めた伝え方が大切
松山 盟氏
ICI石井スポーツ 代表取締役
海外のアウトドアに関係する商品の輸入・卸の企業を経て、2007年ICI 石井スポーツの社長に就任。「アウトドア商品の社会に対する価値観を変えたい」を信念に、同年、原宿に店舗をオープン。ファッション性の高いスタイルで登山を楽しむ人たちが増えるきっかけをつくる。また、店舗内にメーカーの直営店が出店する「club 」スタイルの導入、バックカントリースキーの専門ショップオープンなど、業界の新しい動きをリード。趣味はスキー、フライフィッシング。
貴社にとっての現場力とは?
例えば店舗にやってきたお客さまが、初めて登山やアウトドアの世界に踏み込む場合、そのお客さまが最初に接する店舗のスタッフが、先生・教師なのです。そして、このときの教師がだれであるかが非常に重要で、ここを間違えると、ユーザーは山を嫌いになってしまったり、危険な目に遭ったり、不安な思いをしたりと、いろんなマイナス要素が出てきます。社員は「自分たちは教師である」という気持ちはないのですが、専門店であるがゆえに、必要以上にお客さまに厳しい言葉づかいをしてしまうことがあります。なぜそういうことが生じるかというと、適切な装備を持っていかないと、お客さまの命にかかわるからです。それもあって、われわれの業態では「教師」という立場の接客があっていいと思っています。ただ、それが度を超えてしまうとクレームになってしまいます。「専門店は敷居が高い」というイメージを持たれている根本の原因は、そうした経験をしたお客さまが一定数以上いたからではないかと思っています。
だから、「自然の中に入って、さまざまな状況の変化に対応していくためには、こうした装備や知識が必要なんですよ」ということを、お客さま1人ひとりに適した接し方、話し方で伝えないと、「上から目線だ」などと受け止められてしまう。だから、社員には常々「お客さまの目線に合わせて話すように」と伝えています。この、「目線を合わせ、どうすれば必要・適切な知識を相手に伝えられるかを考えて実行する力」というのが、当社における現場力だと思います。
「教える」という立場にありつつも、伝え方をお客さまに合わせて変化させられるということですね。
そうです。お客さまが不快になっては意味がありませんが、どの程度の経験があって、今度何をしようとしているのかといった、登山経験・レベルの情報をしっかりと引き出すこと。そして、会話の中から、そのお客さまにはどう伝えれば、適切な知識・情報のもと、装備を選んでいただけるのか、ということを見極めるのが大事ですね。キャンペーンを行うとか、ポイントを増やすといったことより、これこそが一番の販促だと思っているくらい重要なことだと思います。