資生堂が2023年9月、新生「inoui(インウイ)」を発売した。2002年からお休み期間を経ての再登場ということで、どんな姿で登場するのかワクワクした。今という時代における「inoui」をどうデザインしたのか、話を聞きに行った。
〝半分革新・半分保守″
「inoui」が世に登場したのは1976年。こっくりとした深みのある真紅色、シャープでスタイリッシュな造形美、颯爽と生きている女性像――高校生だった私は強く憧れたのを覚えている。それは、メイクアップという行為をやすやすと超え、時代に先駆けた生き方、働き方、暮らし方を示唆する気配に満ちていた。「今回のプロジェクトでは、年齢や世代、性差を区分しないブランドのメッセージに共感いただける“意識層”に向けたブランディングをと考えていきました」と、資生堂クリエイティブでクリエイティブディレクターを務める永田香さん。
プロジェクトチームも幅広い年齢層のメンバーで構成し、この難題に取り組んだ。リブランディングの際、最も留意しなければならないのは、「変えてはいけないもの」と「変えなければいけないもの」を区分けしてかたちにしていくことだ。ブランドのルーツにあたり...