CMを音楽の視点から支える音楽プロデューサーという仕事。クリエイティブディレクターや監督と直接対話をしながら、描く世界を具現化するために重要な役割を担っている。今回はCM音楽のトップランナーである、愛印の山田勝也さん、メロディー・パンチの緑川徹さん、Ongakushitsuの福島節さんに、2000年代以降の記憶に強く残るCMを振り返りながら、「名作」CM音楽について話してもらった。
音と人柄は共通している。
プロデューサーはそこを見極める目が必要
自分の想像を超えた
デモ音源こそ「新しい」と選べるようになった
新鮮な楽曲は
予定調和ではなく、ハプニングから生まれる
コスメブランドの「明るくない」CM
福島 僕が新しい表現だと感じたCMは、ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)の、キャメロン・ディアスとブラッド・ピットを起用したシリーズ(2006年~)です。2人が携帯で電話をしながら歩くというシンプルな映像に、エアロスミスの『Walk This Way』やBent Fabric『Jukebox』など往年のヒットソングを重ねたCMで。セリフがない分、曲が際立って、公開のたびに曲も話題になってコンピアルバムがヒットして……広告音楽の世界が動いたCMでした。続いて、特に記憶に残っているCMは資生堂の「新しい私になって」篇(2006年)です。
緑川 僕も印象に残っています。ちょっと悲しい感じのトーンのCMは、それまであまり見ないアプローチでしたよね。
福島 この曲を歌っていた熊木杏里さんを僕はこの当時まだ知らなくて、衝撃を受けました。それまではコスメブランドのCMは「美しさ」に着目したものが多かったなかで、とても新鮮でした。監督と作詞は中島信也さんですね。
山田 秒数を感じさせないCMでしたよね。歌が上手い下手とかではない領域に突き抜けたということかなと。芯を捉えてくるというか、やりたい表現をぶらさずに直線的にやり切るところが、信也さんらしいCMだなと感じていました。
福島 そうですよね。もう1本挙げるとすれば、眞露の「Let’s JINRO見上げる男」篇(2003年)...