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広告に物語を描き出す「音楽」の力と効果

音楽プロデューサーが振り返る名作CM インパクトを生むCM音楽はどう生まれる?

山田勝也(愛印)緑川徹(メロディー・パンチ)福島節(Ongakushitsu)

CMを音楽の視点から支える音楽プロデューサーという仕事。クリエイティブディレクターや監督と直接対話をしながら、描く世界を具現化するために重要な役割を担っている。今回はCM音楽のトップランナーである、愛印の山田勝也さん、メロディー・パンチの緑川徹さん、Ongakushitsuの福島節さんに、2000年代以降の記憶に強く残るCMを振り返りながら、「名作」CM音楽について話してもらった。

音と人柄は共通している。
プロデューサーはそこを見極める目が必要

愛印
山田勝也(やまだ・かつや)

愛印 代表取締役社長。九州新幹線全線開業CMの制作楽曲『Boom!』が大ヒットを記録。近年では大塚製薬「ポカリスエット」、カロリーメイト、JR東海、ゼスプリ、サントリー天然水、麻布台ヒルズブランドムービー、羽生結弦単独公演『Yuzuru Hanyu ICESTORY 2nd"RE_PRAY"TOUR』の音楽などを手がけている。またCM音楽以外でテレビ番組『しまじろうのわお!』、映画、ドラマなどその活動は多岐にわたる。

自分の想像を超えた
デモ音源こそ「新しい」と選べるようになった

メロディー・パンチ
緑川 徹(みどりかわ・とおる)

1972年生まれ。福島県出身。96年からCM音楽に携わり、2005年にメロディー・パンチ設立。CM・映画音楽を中心に幅広い分野で活躍している。主なCM作品にau、ソフトバンク、KIRIN、サッポロビール、サントリー、大塚製薬、東京ガスなど。映画作品としては『騙し絵の牙』(2021年、吉田大八監督)など、ドラマ作品としてはNHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021年、安達奈緒子作)などがある。

新鮮な楽曲は
予定調和ではなく、ハプニングから生まれる

Ongakushitsu
福島 節(ふくしま・せつ)

九州熊本育ち。武蔵野美術大学在学中より音楽活動を開始。2014年にOngakushitsuを設立し、音楽プロデューサーとして映画、ドラマ、CMの音楽を多数手がける。2018年に香川県直島への移住をきっかけに、シンガーソングライターとして活動を開始、アルバムを5枚リリース。日清どん兵衛CMソング『どんぎつねの歌』、明光義塾『YDKの歌』、しまじろうのわお!『かなピーマン』、ドラマ『きのう何食べた?』の『ナカムラヤのテーマ』など数多くの歌を制作。また娘の福島渚(9歳)との親子ユニット「福島節と渚」として『24時間テレビ』や「みてねみまもりGPS」「ニッスイ」などのテレビCMに家族で出演。東京と直島の二拠点生活を続けながら、オリジナルな世界観で音楽を発信している。

コスメブランドの「明るくない」CM

福島 僕が新しい表現だと感じたCMは、ソフトバンク(旧ソフトバンクモバイル)の、キャメロン・ディアスとブラッド・ピットを起用したシリーズ(2006年~)です。2人が携帯で電話をしながら歩くというシンプルな映像に、エアロスミスの『Walk This Way』やBent Fabric『Jukebox』など往年のヒットソングを重ねたCMで。セリフがない分、曲が際立って、公開のたびに曲も話題になってコンピアルバムがヒットして……広告音楽の世界が動いたCMでした。続いて、特に記憶に残っているCMは資生堂の「新しい私になって」篇(2006年)です。


緑川 僕も印象に残っています。ちょっと悲しい感じのトーンのCMは、それまであまり見ないアプローチでしたよね。

福島 この曲を歌っていた熊木杏里さんを僕はこの当時まだ知らなくて、衝撃を受けました。それまではコスメブランドのCMは「美しさ」に着目したものが多かったなかで、とても新鮮でした。監督と作詞は中島信也さんですね。

山田 秒数を感じさせないCMでしたよね。歌が上手い下手とかではない領域に突き抜けたということかなと。芯を捉えてくるというか、やりたい表現をぶらさずに直線的にやり切るところが、信也さんらしいCMだなと感じていました。


福島 そうですよね。もう1本挙げるとすれば、眞露の「Let’s JINRO見上げる男」篇(2003年)...

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