毎年年末の風物詩となっている番組『M-1グランプリ』(朝日放送テレビ)。本編はもちろんのこと、ここ数年は、12月上旬から徐々に公開されるOOHも注目の的となっている。なぜ、『M-1』はOOHを出し続けているのか。2023年12月に実施されて話題となった「#どういうわけか日本一M1見られている青森県」の裏側にも迫った。
参加性を高める、OOHという媒体
「ここ数年間で恒例化してきた『M-1』のプロモーションとしては、皮切りとして公開する大会メインビジュアル、出場者たちの熱き戦いの裏側に迫った4分間のPV、都営大江戸線六本木駅(東京)での広告ジャック、阪急大阪梅田駅・阪神大阪梅田駅でのOOHなどがあります。それらのメインの施策のほかに、毎年チャレンジ枠として新たな施策を2、3実施させてもらっています」と話すのは、2018年から『M-1』のプロモーションを担当している、電通のクリエイティブディレクター有元沙矢香さん。自身も関西出身で、生粋のお笑い好きだ。『M-1』の宣伝を担当する朝日放送テレビPRプランニング部の衣川淳子さんは有元さんを「やりたいことを言えば100倍にも1000倍にも良くして実現してくれる、身内のような存在」だと話す。
2022年の『M-1』の際は、メインのOOHのほかに、Osaka Metro 御堂筋線での広告ジャック「M-1感謝列車」、前年王者の錦鯉を鯉のぼりにして朝日放送テレビの本社に設置した「錦鯉のぼり」、雅紀さん(錦鯉)の故郷である札幌に掲出した「ライフ イズ ビューティフル」(錦鯉M-1優勝時のネタ)のポスターなどを展開していた。
OOHについて、実際例年どのくらい注力をしているかを聞くと、「宣伝費のうちOOHは3割ほど、でも私たちの力のかけ方は全体の9割ほど(笑)」と口を揃える。もちろん、ほかを疎かにしているわけではなく「毎年恒例の企画は、ある程度決まっている部分が多いのですが、チャレンジ枠の企画は、前年王者や大会のニュースに合わせて企画し、予算もあまりかけられないので、実施には試行錯誤が必要で労力がかかるんです」と有元さん。しかしなぜ、M-1はOOHに力を入れるのか。「今時皆スマホしか見ていないだろう、という想いもあるんですが、でもM-1だからこそファンの方々が振り向いてくれる可能性もあるなと思っていて。そのためにインパクト大のものを出したいし、それで遊んでもらいたいという気持ちがありますね」と衣川さん。
有元さんもこう続ける。「限られた予算でOOHの効果を最大化するには、ファンの皆さんの力は必須です。M-1と出場する漫才師さんにはすでに熱いファンの方々がいらっしゃるので、どういう企画にすると、どうSNSに投稿してくれるだろう、と想像しながら企画を詰め、媒体を選びます。ユーザーの方の投稿文ひとつでも拡散の仕方が変わっていくので、もはや大喜利ですよね。そういう点で、OOHはメディアの中でもかなり参加性が高いものだと思うんです。OOHを通じて世の中の皆さんと『M-1』本番への期待感と盛り上がりを一緒に醸成していきたいと思っています」。
「なんで青森?」を企画のフックに
そして『M-1 グランプリ 2023』に向けては、毎年恒例の施策のほかに...