1872年10月に新橋と横浜(現在の桜木町)間を結ぶ日本で初めての鉄道が開業してから、今年で150年を迎える。それを記念して、JRグループ6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)は22年4月から「鉄道開業150年キャンペーン」を実施中。掲げたコピーは、「会おう。」。鉄道と人とが今一度出会うきっかけを生むようなコンテンツが展開されている。

鉄道開業150年のロゴマークと、ロゴを元にデザインしたサイネージ広告。
「出会いを生む」という鉄道の価値
鉄道開業150年にあたり、JR側ではその前年から「鉄道の歴史を振り返るとともに、鉄道の利用促進につながる企画」(東日本旅客鉄道 マーケティング本部 柴田信幸さん)の検討がなされていた。オリエンを受けた電通zeroのエグゼクティブクリエーティブディレクター 八木義博さんは「“鉄道開業150年”をそのまま掲げてしまうと、内輪の話題でしょ?と思われてしまいかねない。どうしたらこの節目のタイミングを日本中の方々に自分ごととして楽しんでもらえるだろう、という観点からコミュニケーションを考えていきました」と話す。
提案したのは、「会おう。」という言葉を掲げたアイデアだった。「鉄道の価値を改めて考えると、それは単にインフラというだけでなく、人と人や人ともの、人と地域をつなぐことにより、出会いを生んでいることなのだろうなと。そんな存在としての鉄道を人々に意識してもらい、自身の記憶を呼び起こしたり、あるいは新しい思い出をつくるきっかけになったり──という機会を創出していけたらと思ったんです」(八木さん)。
そんな姿勢を示すものとして、まずはJR6社のロゴを並べた150年のステートメントムービーやポスターを制作。ムービーはさまざまな人の出会いの記憶を呼び起こすべく、記念写真や家族旅行のスナップ写真などを取り入れた。
さらに「JRグループはもちろん、民営鉄道や鉄道に関わる仕事に携わる方々も含め、記念の1年を同じ思いで盛り上げていきたい」(東日本旅客鉄道 グループ経営戦略本部 谷口理沙さん)という考えから、各社で使用できる鉄道開業150年のロゴマークも制作した。SLと赤い橋をモチーフにしたロゴのデザインについて、八木さんは「『会おう。』というコピーからデザインしたものです。鉄道会社や鉄道に携わる人々が橋渡しをしながらインフラをつくり、出会いを生んできたことを表現しています。また橋のアーチは、新たな何かが生まれる予感を表しました」と話す。
提案したところ、「赤はお祝いのイメージがあり日本人誰しもが慣れ親しんだ色で、橋をモチーフにしたデザインもメッセージ性があってわかりやすい」(柴田さん)とJR6社での合意が取れた。実際にロゴは東武鉄道が同社の創立125周年に合わせて掲げるなど、活用の場面は広がっている。

JRグループ6社による鉄道開業150年のステートメントムービー。大切な人や場所と会うための架け橋としての鉄道の存在を描いた。

鉄道開業150年に合わせて展開されているポスター。JRグループ6社の6色ラインをベースに、人々の思いを乗せた列車が日本各地を繋いでいる様子を表現した。
“鉄道ともう一度出会う”ためのスタンプラリーの仕組み
さらに、実際に人々が“鉄道ともう一度出会う”ためのトリガーとしてつくられたのが「STATION STAMP」と「SOUND STORY『駅で会えたら』」という2つのコンテンツから成る「TRAIN TRIP」だ。いずれも、JRグループの鉄道開業150年キャンペーンページから無料で利用でき、スマートフォンのホーム画面にアプリのように表示させて使うこともできる。
「STATION STAMP」は...